謎の彼女X - 植芝理一

というわけで植芝理一の「謎の彼女X」である.

謎の彼女X(1) (アフタヌーンKC)

この漫画の魅力といえば,まず最初に挙げられるのが主人公椿明の妄想なんじゃないだろうか.ここでは高校生男子というどうしようもないどうしようもない生き物の持つリビドーがすごくリアルな形で表現されているように思えるのだ.・・・どんなものなのかを説明するためにまずはちょっとだけ僕の妄想遍歴について述べてゆきたいのでどうかおつきあいのほどを.


女性性とちんこを結びつけるきっかけがいつどこにあったのかなんて覚えていないのだが,僕の記憶をたどることのできる範囲で言えば,それは小学生低学年のころ物置のような狭い部屋でひとり隠れてうる星やつらを読んでいた記憶にまで遡る.土曜など学校が午前中で終わった日には脇目もふらずまっすぐ家に帰り,そこは普段トイレットペーパーや蛍光灯,めったに使わないようなお客様専用の皿だとかクリスマスツリーだとかをしまっているその3畳ほどの部屋で息を潜めながら,父母の部屋からうる星やつらを大量に持ってきて読み耽っていた.べつにちんこをいじっていた訳じゃあない.ただなんとなく浸っていただけなのだ.

そしてその頃の夜のベッドの中での妄想といえば,たいていはうる星やつらぽい(と言うとなんかアレだけど,だってそうなんだもん!)ハーレム的なもので,女の子たちの乳首と性器は露出していなかった.おっぱいは大きかった.性器はなんだか気味が悪かった.性器を露出しないのだから当然まあ,セックスの妄想をするわけがなく,単にたくさんの女の子に囲まれていちゃいちゃするだけ.それだけだった.*1


そんな妄想が決定的にセックスへと傾いたのがいつのことだったかは覚えていない.ともかく中学生のころにはもう,セックスへの憧れのようなものを抱いていたのは確かだ.

そんななか初めて彼女というやつができたのが,高校1年生のとき.初めて女の子の部屋に入ったのが高校2年生のときだった.せっかく彼女ができたというのに、僕にはセックスなんて畏れ多くてできなかった.彼女がいるときでさえ、妄想で済ましていた.キスさえできなかった.そんなオクテの男の子がいったいどんな妄想をするのか.

やっぱりセックスだってする.最終的にはそりゃあセックスだってするんだけれど,じつはそこがいちばんの盛り上がりどころじゃない.女の子の体に触れること,服のすき間から見えそうで見えない下着を,その下の乳首がどんなふうに僕の前に現れるのか,その過程を妄想するときがいちばん高揚した気分になった.結局こういうところは幼い頃からなにも変わっていないのだ.

そういえばその中には「よだれ」*2に関するものもあったなあ,なんて思いだす.好きな女の子がふいた縦笛には,ベタだけどもやっぱり,興奮してしまうのだ.こういうのってやっぱり,女性というものをほんとうに何も知らなかったからこそなせた業なんじゃないかと思う.いまではそんなふうに妄想することもなくなってしまったのは,多少なりとも(ほんとに多少ではあるけれども!))女性というものを知ってしまったからなのだろう.


ここにはそんな高校生のころの妄想のいちばんすばらしい部分がそのまま詰まっている.文句なしにお薦めであります。

*1:そういえばこういう妄想をしているときにはなぜだかよくくしゃみが出たなあ.

*2:この「謎の彼女X」の中ではすごく重要なはたらきをするもの