ユリシーズ - ジェイムズ・ジョイス

ついに読了.結局読み切るまでに1年半かかってしまいました.この小説については(長い時間をかけて読んできただけに)いろいろ書いてみたいことがあるのですが,とりあえず今は読み切ったという感慨がいちばんおおきいです.おもしろかったかというと,どうなんだろう.おもしろかったのかな,なんて迷ってしまう感じ.なんというかこう,ふだん小説を読んでいるその読み方とはまったくちがった読み方をしたものだから,正直よくわからない.とにかく僕にとっては空前でありもしかしたら絶後なんじゃないかとおもう,奇妙な奇妙な読書体験でした.
ユリシーズ 1 (集英社文庫ヘリテージシリーズ)
ユリシーズ 2 (集英社文庫ヘリテージシリーズ)
ユリシーズ 3 (集英社文庫ヘリテージシリーズ)
ユリシーズ 4 (集英社文庫ヘリテージシリーズ)
ユリシーズといえば「ことば」なんだけれど,こうして自分が読んだのは翻訳*1だということもあり,さすがにどうのこうの言えたものでもないでしょう.ジョイスの作品であるいっぽうで,丸谷才一・高松雄一・永川玲二の3人の作品といってもある意味間違っちゃいないはずです.註がひどく多くて,全くそんなもの見ずに読み進めることだってできたのでしょうが,結局今回は毎度まいどそれを参照しながら読むことにしました.そういう意味でも流れの阻害のようなものが起こってしまったのかもしれませんし,そもそも日本語読むというその時点でそんなこと不可能になってしまったのかもしれません.リアリスティック/シンボリックな言葉や行為の対比を頭で理解するだけでなく,肌で(?)感じられることにものすごく憧れました.ともかくこれほどまでに母語が英語でなかったことを悔しく思ったことははじめてでした.

アイルランド史やこれ以前のジョイスの小説,さらにもちろん下敷きとなったホメロスの叙事詩やシェイクスピアの作品たち,その他イギリス文学もろもろ,そして聖書まで,そういうものをもっとちゃんと読んでみて,そしてもう一度読み直してみたいものです.*2

そんなわけで,今後読み直すときに備えて*3毎挿話の詳細なあらすじと,登場人物のダブリン市内外での移動の様子をまとめていきたいな,なんて思っています.現代には Google Maps なんて便利なものもあることですしね.

*1:それにしてもこれ,かなりの訳業ではあるよなあ

*2:じつは勢いでペーパーバックも買ってしまったのですが,まあ当然放置プレイであります

*3:そして我らがオデュッセイアに敬意を表して!