半島 - 松浦寿輝

繊細だけれども,それだけに強い印象をのこさない小説だったように思う.
半島 (文春文庫)
だってアレですよ,中年男が仕事を辞めて隠居しようかとかなんとかいう話なんだから,そりゃもうもちろんのこと派手になんかなりようが無く.それでもこれが小説としての強度を保っていられるのは,生きることに対する独特の目線と,現実と幻想の間のなめらかな移行によってなのです.

この手の現代文学を読みたくなるときってのは,なんとなくこういう,茫漠とした感覚を自分の中に呼び覚ましたい時なのですが.うん,とにかく,それにぴったりでした.


著者が,最近これと同時に読んでた「フーコー・コレクション」の訳者でもあることに気づいたときには,なんだか妙な気分になった.