いい本でした.都市だとか建築だとかそういったものに少しでも興味を持つ人すべてにお奨めしたい.
都市について,何に注目し,あるいは切り捨て,その対象をいかにして観察し,記述・変換していくかという,都市を対象としたフィールドワークの方法論について述べられている一冊.全体を俯瞰し把握することのできない*1「都市」という対象をあぶり出すための方法としてフィールドワークを捉えている.
フィールドワークにおける内部性と外部性,文化人類学,レヴィ=ストロースやフーコーの言説,ベンヤミンの「パサージュ論」,シカゴ学派の都市社会学,シチュアシオニストたち,レム・コールハース,都市を写真に撮るということ,伊東忠太,「悪い景観」,サウンドスケープ,今和次郎の考現学,都市における自然・・・などなどなど.
個人的には,参与観察の限界だとか,都市を記述する方法の模索,といった話題が特に興味深かったように思う.必ずしも具体的な「やり方」示されているわけではなく,そういった部分はそれこそ読者ひとりひとりに委ねられている.
べつに専門家に限ったことなんかじゃなく,ふだんなんとなく街だとか建物だとかみんなの生活だとかについて気になっている人ならば,その目線に新しく面白いなにかを付け加えることができるんじゃないだろうか.
*1:たとえできたとしてもそれによって「理解」できる範囲などひどく限られている