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臭い

日常

ちんこが臭い。せいえきの匂いがするんだ。それは遙か遠い記憶。

はじめてオナニーを試みたときのことだったのだろうかな。それは同時にはじめてちんこをむいた日のことでもあったんだ。
おそるおそるとむいたとき、そこにたまっていた恥垢をみつけたそのときの記憶。

夕食のテーブルの上に装甲車が置かれてるみたいだった。包皮の裏側はクラインの壺のようで、僕を4次元空間へいざなってくれたよ。その後にテレビをつけたときの、ブウンというブラウン管の呻りさえ鮮明に覚えている。僕の目の解像度ってこんなにも高かったんだっけか。光の三原色がすっかり識別できてしまう。テレビの中から出てきたのは


母?母親?


オナニーのしすぎだと僕の頭のなかの悪魔が言うのです。母親の姿形をした悪魔が意地悪にささやくんです。ちんこが臭いのはね、って。


はじめてできた彼女との、初デートの前日に、すごく念入りに、僕は洗った。もしものことが、もしものことがあっちゃいけないじゃないか。もしものことがあってほしいじゃないかと考えながら。僕は洗ったんだから。


でもこれは僕が、濡れたアスファルトの匂いの次に好きな匂いなんだ。「キンモクセイの香り」が言った。

繰り返し、繰り返し、繰り返し。

僕は、城崎のどこかに、いまから100年ほど前にそこに存在した、たった一日だけ存在したという、伝説の蜂の死骸になったみたいな気分だった。