京都百景 二

三条大橋である。東海道の終着点である三条大橋である。僕のこのくだらないおしゃべりを、とりあえずそんな三条大橋周辺からはじめてみたい。三条大橋というか、正確にはその橋の下の話になる。三条河原と言えないこともないが、それもやはりほんとうでない。つまり、鴨川の、川そのもの。それは、水。

もしあなたがハタチ前後の*1酒とバラの日々を京都で過ごした糞みたいな人間のひとりであったなら、一度は鴨川に飛び込み、パンツ一枚ではしゃぎ回りちんこを見せ合い、ところどころ穴のあいた鴨川の川底の上を闊達に走り抜け、河原の外人がガンジャを吸う姿を横目に木屋町へと舞い戻り、DQNが自転車を盛大に倒しまくるすがたに自分を差し置いて心を痛め、立誠小学校のポリスメンに無駄に怯え、呼び込みのおっちゃんは白い目で僕を見つめる、そんな経験が一度くらいはあることと思う。世界の裏側では今まさに日が昇りつつあるんだということが信じられないささくれだった心で卵投げ合戦をしたことがあろうと、僕は信じている*2。ラーメン屋「みよし」にて、とんでもなく空しい気持ちになると承知の上で替え玉を3回頼んだ経験がおありのことと思う。あの繁華街の路地裏のにおいというものが好きでたまらなくなった元凶はここにあるし、定食のご飯おかわり自由の松屋は京都ではたぶんここにしかない。どれもこれも中途半端でちっぽけだけど、夜の町だなんてとてもいえたもんじゃないしょうもない街だけど、そんな繁華街にしかないものがここにはあった。今だってあるだろう。飲み会終わりのテニサーらしき集団の横をうんこの話をしながら執拗に往来し、高瀬川の流れにゲロを任せる。そんな光景が、今このときにだって繰り広げられているのだろう。諸君、私はビルの側面に鈍く光るスナックの看板が好きだ。そこらにうち捨てられた煙草の吸い殻が好きだ。そして僕はアスファルトに口づけし、血の味を噛みしめる。一人で転んじまっただけだ。

だけど僕は、そんなことがあった次の朝。日曜の朝の木屋町を歩くのも、大好きなんだよ。

*1:女子たちの行方に目を血走らせ昼間から学食でビールを飲んでいるような、文字通り

*2:卵はスタッフがおいしくいただきました