いきなりですが泉和良という人の話をします。

いきなりですが泉和良という人の話をします。ええと、ご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、アンディー・メンテのジスカルドさん*1の筆名です。基本的にはフリーウェア・ゲームをつくっている人で、それについてはこのへんが詳しいでしょうか。

で、なんだろう、書きだしにくいな。いつもここで感想書いてる本とはだいぶ毛色がちがって、どちらかというとラノベに近いです。でもラノベじゃないよなあ。3冊出てるのですが、いずれも基本的には無職で、まだおっさんには早いかな?でも呼ばれてもおかしくないかな?というくらいの年齢の男性が主人公です。そんな本。基本的にはどうしようもない人が描いてあるような、そんな本です。

これらの本の感想を書こうと思ったきっかけは、女子高生たちがケータイ小説にたいして「リアル」って言ってるってのはこんな気持ちなのかな、と思ったからです。つまり、インターネットでうじうじしたり非モテたりしているような、屈託のある*2独身男性が感じる括弧つきの「リアル」みたいなものを感じた、ってことなのです。
エレGY (講談社BOX)spica (講談社BOX)ヘドロ宇宙モデル (講談社BOX)

話のスジはどれもそれほど変わりません。何をするでもなく一日中部屋に座っているような男性の主人公と、流行り言葉で言うところの、すこしプリントアウトな、しかも「可愛い」、ということは、男性にとっての身勝手な幻想だということなのですが、そんな女の子との共依存のような甘やかさが書かれ、傷付き傷付かれて、それを通して主人公は変わったり変わらなかったりします。いや、ほんとうは変わらないのですが、それについては後述します。そういう話ばかりです。

これだけ聞くと「えー!」とか思われるかもしれませんが、ええと、なんだろう、たぶんその通りです。いや、大事なのはむしろその通りすぎることなのです。かなり私小説的なのですが*3、とにかく恥ずかしげもなく自意識が吐露される。読んでるとイライラするかもしれません。だけどそれがいいのです。いい歳した男がこんなことを考え書いてるってのは、たぶん、ちょっとじゃなく、おかしい。てゆうか、インターネットでなにか書こうとしている人はだいたいおかしいですから(そうですよね!)、僕の日記を読んでる人もだいたい同じようなもんだと思います。だけどそれがいいのです。

僕が言っていいことでもないんですが、表現は凡庸だし、先も書いたとおり、お話じたいもそうです。そうなんだけど、いつもの逃げ口上を使うならば、せいじつさみたいなものがある。ほら、インターネットをふらふらしているときに出会う、なんだか文章も支離滅裂だし、言ってる内容も「これはひどい」なんだけど、やけに心打たれてしまう瞬間ってあるじゃないですか(あるじゃないですか論法)。あれに近い。僕はそういうものが読めるインターネットを最大限に肯定するし、だから、それを昇華させたこれらの本だって肯定するんです!するんですよ!そうやってぶちまけられた理想と脂汗と怠惰と自己弁護と、それでも理想と…にまみれた世界が、もうひとつの世界で生きていた*4はずの自分を投影したものこそが僕たちにとっての括弧付きの「リアル」なんじゃないか。

そんなんだからこそ、最後にはなにかしら希望が見えたような気がするし、ハッピーエンドに見えたりもするけれど、主人公は根本のところでなにも変わらない。だけど僕はそれを読みたいのだししがみついていたい。インターネットで表現しようとする人がいるこの、いまの、もう子供じゃない子供の、アンチ・ビルドゥングスロマンとしての青春小説だと声を大にして言うんです僕は大声で僕はぼくは

*1:http://f4.aaa.livedoor.jp/~jiscald/

*2:自分で言ってりゃ世話ないね!!!

*3:じっさいエレGYの主人公の名前は泉和良というフリーウェアゲーム作家です

*4:ここは過去形にしてみたくなりました