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ヴォイニッチホテル - 道満晴明

今日は道満晴明せんせいの『ヴォイニッチホテル』の感想を書きます。ずいぶん前からヤングチャンピオン烈で連載されていた*1作品がようやく単行本化。読み切り短篇は性本能と水爆戦シリーズに収録されていたものをたくさんたくさん読んでおり、大好きだったのですが、連載もの*2を読むのははじめてなのですよね。道満せんせいの好きなところが、連載という形をとることでより増幅されていた印象でした。


ヴォイニッチホテル 1 (ヤングチャンピオン烈コミックス)


どんなお話か。裏表紙にはこんなふうに書かれています。「太平洋の南西に浮かぶ小国・ブレフスキュ島*3。この小さな島のホテルが舞台。陽光降り注ぐ、のんびりとした南国ムードの中、エキセントリックな宿泊客達が織りなす悲喜交々人間ドラマ。」……うむ、その通りだ!

太平洋の南西に浮かぶ島らしいと言うべきか(偏見でしょうか)、この島にもやっぱり民間伝承というものがありまして、それがお話のひとつの核になっています。魔女が生きのこる島なのです。前もピンチョンの感想かなにかに書いたはずですが、そもそも僕がそういう、魔術やらなんやらがこっそり日常生活に忍び込むようなお話が大好きっていうのは、すごくある。「すこし ふしぎ」ってやつか。そしてまた、太平洋の南西に浮かぶ島らしいと言うべきか(偏見でしょうね)、殺しやら麻薬の栽培やらのイリーガルな行為が普通に起きてる。あまり悲観的ではなくて、なんとなく、起こるべきこととして、軽妙さを隠すこともなく、起きる。そういやタランティーノとか好きな人はこういうの好きなんでしょうね。つまり僕も好きなんだ。

基本8ページ漫画なのでテンポがいい。しんみりさせるし、かつ、見開きごとに笑わせてもくれる、このあたりは他の道満せんせの漫画を読んだことのある人にはおなじみですよね。「島の英雄譚を電撃文庫と一緒にすんな」。「身内なら『あれ 引きわけでもよくね?』っていうレベルですよ」。 最後のコマがちゃんとしょーもないネタで締め括られてるところとかもそうだ。なんていうか、ベタな叙情、ドラマとしての安心感(そうなんだよ、これがしっかりしてるから嬉しいんだよな。窓から煙が立ち上るくだりとか最高じゃないですか)のうえで、みんながなんてこたあねえ感じで下ネタ飛ばすっていう、そういう。感傷の煽り方としては、そうなんだよ、王道なんだけど、舞台設定の妙と下ネタが入ることによってそれが際立つっていう、そういう。

で、連載ものだから良さが増幅されてるってのはどういうことかってえと。ほとんどホテルの周りだけっていう狭い範囲での群像劇というかたちをとっていて、っていうかさっき数えたら既に20人以上いたんですけど、多いな、いやそれはともかく、こんだけ狭い空間でこれだけの人数のキャラクターをわいわい絡ませられるのは、やっぱり連載ならではですよね。お話のなかでそれなりの期間付き合ってるんだから、そのぶん移入だってしやすくなる。……まあ、そんなもん当たり前のことなんですけど、道満せんせいの作品として読み切りの短篇しか読んだことのなかった自分としては、じつは相当に画期的なことだったのです。さっき言ったような叙情もふくめて、語りの地力をほんとうにさりげなく、重くすることなく、出せる人なんだよなと感嘆する。

あとなんだろう、あとなんだろう。そうだ、女の子がむちゃくちゃかわいい。俺にドンピシャなんだよ。悪いか。

*1:ようだ、買ったことないし読んだことがなかったのだ

*2:「ぱら★いぞ」はちょっと別だろ

*3:どっかで聞いたことあると思って調べてみたらガリバー旅行記か!