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自転車で帰省した話(3日目)

自転車脳の恐怖

※今回は自転車にほぼ乗りません。


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前回の終わりに「諸事情によりこの後車で長野県へ行くことになる」と書きました。いったいどういうことか。説明するためには時間をすこしだけ遡らなければなりません。帰省するちょっと前のこと。

ある日、無免許さん(id:llena)からtwitterのダイレクトメッセージが届きました。「おいちょっと仲良くしようぜ」とかだいたいそんな旨。仲良くしたい僕は「仲良くしたいのですがこんど実家帰る予定なのです、どうしましょう」という旨返事をすると、「じゃあその途中でうち寄りなよ」いやしかし「寄りたいのですが自転車なんですよ……電車賃もあんまりなくて……」「じゃあ車で自転車ごと迎えに行くよ」……なんだと……「では浜松までお願いいたします」。大まかに言ってこんなやりとりがありまして、僕はこの日長野県に向かうことになりました。回想おしまい。ええと、意味がよく分からないと思いますが、そういうものです。とにかく僕は長野へ行くことになったのです。

そんなこんなで20時くらいだったか、浜松駅で落ち合う。無免許タクシーとの邂逅。飯を食う。車に自転車を載せ出発。さて、浜松から飯田まで、自動車でいったいどのくらいかかるかご存じですか。3時間です。3時間て!遠いわ!!なんで迎えに来るなんて無茶なことを言ったんですか!!!真っ暗な道をバンに乗って走る。「青崩峠ってところのほう通ればもうちょっと早いんだけど文字通り崩れちゃってて通れないらしいんだよね」「マジすか」「この橋かっこいいでしょ」「ほんとですね、ああでも、こんな構造してる必要あんのかな」とかなんとか話しながらひたっすら山を上る。地方の山道ってのはどこもそうだけど、一車線しかなくて九十九折りになってる、夜になれば霧も出る。「来るときに立ちションしようと思って車停めたら、ちょっと向こうのほうに誰かおるんよ。あれ、おっさんが両手挙げてんのか、恐っ、とか思ったら、それが鹿でさ」「マジすか」「鹿いないかなー」。鹿もいた。「こんどリニアが通るからさ、そしたら品川から一時間かからないわけ。人が吸いとられるに決まってるでしょ。だからなんかウリを作っとかなきゃとかいう話で、蕎麦をね」「蕎麦ですか」「蕎麦でなんかやろうって」「ほほう」「で、その会合が明日あるから、ムラシット君もちょっと来なよ」「えっ!」知らないおじさまがたのひしめく会合に呼ばれることになりつつ、日付も変わり、どうにかこうにか飯田に到着、深夜だからと安く泊めてもらえるホテルを探しチェックイン。寝る。


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10月19日。

朝起きてみたらえらく具合が悪い。チェックアウトしてまた深夜に行って安く泊まろう……などというケチ臭く不埒な計画だったのだけど、そうも言ってられず延泊ってことでとフロントに連絡し、二度寝。拍子抜けするくらい普通に治ってしまって、だいたい11時くらい。……さて、今日の夜は例の会合というか飲み会に出席せねばならんのだな……と不安になりながらも、とりあえずそれまでの時間は自由だってことで、飯田市を観光してみることに。前日の夜にいろいろ情報は聞いていたものの自転車ではそんなにたくさんまわることもできんだろうと思い、市街地を適当に走っていたら「大勝軒」の看板が。東京に住んでる方はよくご存じの、あの元祖つけ麺、大勝軒の暖簾分けの店らしい。じつは僕はあんまり好きでもないのだけれど、それはそれ、面白そうだとここで昼飯を食うことにする。美味かったかどうかは……まあ、みなさん飯田に行って直接お確かめください。腹も膨れたことだしとふたたび飯田市街を当て所なく走る。いかにも城下町らしい町割で綺麗だなーと思っていると今度は自転車屋さんを見つけ、昨日コケたときに一度壊れてしまったブレーキを診てもらったりもした。それでもまだ13時前くらいだったか。まだまだ暇だなーと、昨晩「原広司設計だよ」とだけ聞いていた飯田市美術博物館がいちばん近そうだと見当をつけ、行ってみることに。

何があるかようわからんねと思いながらとりあえず入ってみると、まずプラネタリウムがあるということを発見。そのときの自分のテンションがよく思い出せないのだけど、なぜか「これだ!!!!!」と思い、ちょうど14時半から放映だとのことだったのも手伝ってさっそく申し込む。それまでしばらく時間があるということで、「美術博物館」の博物館的側面であるところの飯田市の歴史などについての展示を眺めることに。フォッサマグナ!とか考えながら地質について知ったり、中生代の動物のかっこいい模型を見て興奮したり、飯田周辺の街道を「あー、明日どこ通って名古屋に下りよう……」とか考えながらぴかぴかさせてみたり*1すっかり楽しんでしまったところで、ちょうどプラネタリウムの時間ですよとの館内放送が流れる。

さすがに平日の昼間、自分も含め3人しか観客がいなかったけれど、プラネタリウムのおじさんはしっかり今日の夜空の説明をしてくれた。次いで放映されるのは飯田周辺の集落のお祭りについての番組。冬至を迎えるにあたってこういう祭りを一昼夜行うんだよというドキュメンタリーで、プラネタリウム用に作られたものであるから、祭の様子が魚眼レンズで撮影されていたりもする。NHKで深夜にやっていそうな地元色の濃い簡素なドキュメンタリーで、僕はわりとこういうの好きなんですよ。最後のプログラムは、チリのチャナントール山頂に赤外線望遠鏡を設置することについての……ドキュメンタリーとかじゃねえのか、ドラマかよ、ほほー。坂口憲二みたいな感じの俳優さんが出てきて、地元の少年と心を通わせるという筋立て。わりとどうでもいい感じだったけれど、最近はこういう番組もやってるのだなあオリンパスが配給してるんだなるほどなるほどと、プラネタリウムを観るのは15年ぶりくらいだったので、これはこれでえらく感心してしまった。なんだかんだ言ってすっかりプラネタリウムを堪能し、そういえば原広司設計だったんだこの建物と思い見て回ったり屋上に上ってみたりしつつ「ほほう……原広司……っぽい……かもしれんなあ……」と建築学科卒とは思えない感想を漏らしつつ、屋上から見た天竜川方面の景色(飯田の城下町あたりはちょっと小高くなっており、鼎のあたりがよく見渡せる)がいい感じだった。遠くにイオンが見えて、農道を軽トラが走り、鳶が空を飛んでたりするだけっちゃだけなんだけど。

えらく長々書いてきたけれど、まだ見どころあるよ飯田市美術博物館。柳田邦男館および日夏耿之介記念館だ。日夏耿之介飯田市出身だとは知らなかった。柳田邦男がどう飯田に関係あるんだ、たしかあの人兵庫出身だよなと思ったら、婿養子になった先が旧飯田藩士の柳田家だったというゆかりがあるんだそうで。知らなかった。各々の住んでいた家を移築し人となりを伝える感じのなんてことはない施設だったけれども、柳田邦男館には彼の蔵書の一部が寄贈されていたり、民俗学についての書籍が集められている図書室みたいなところがあって、いろんな地方の「○○町史」や「××民俗会報」みたいなのが置いてあったりしたのは面白かった。好きなんですよ、地方の図書館とかでそういうの読むのが。地元のおっさんの趣味が嵩じてそういうのに寄稿してたりもするけれど、こういうのってどういうコミュニティがあってどういう気持ちでやってるんだろうなといつも気になる。インターネットが好きなのと同じような心理なのかもしれないと思う。


そんなこんなですっかり満喫していたらもう夕方、そろそろ例の会合の時間。……なんだけど、ちょっと長くなってきたので今日はここまで。次回、知らないおじさんに囲まれた飲み会、ムラシットはいったいどうなってしまうのか!!!

*1:よくあるじゃないですか、でっかい地図板があって、手元のボタンを押すと街灯箇所のランプが点滅するやつ、あれです