ゲームと「できること」の芸術 - C. Thi Nguyen

以前読んでおもしろかったグエンのべつの論文“Games and the Art of Agency”を読んだ1。Games: Agency as Artのもとになったもの。以下に内容をメモっておく(いつもどおり内容は保証しない)。 著者のグエンについては、たとえば下記で紹介されている。とい…

2024-04-01

『マンゴー通り、ときどきさよなら』を読んだ。きっかけはこちらで紹介されている(いつも本や漫画の紹介がおもしろそうなんだよな)のを見たからで、前半あたりは「ほーん、移民が集まる街のようすを活写したやつっスね。はいはい」みたいなナメた態度でい…

人類の会話のための哲学 - 朱喜哲

読んだ。 人類の会話のための哲学: ローティと21世紀のプラグマティズム (nyx叢書, 008)作者:朱 喜哲よはく舎Amazon 読んだ動機は以下のとおり。 『プラグマティズムの歩き方』『真理・政治・道徳』といったミサックの本を読んできて1それらにある程度馴染み…

「自然としてのゲーム」について

こないだのBG3感想日記に書いた「ソリッドで一見しては把握できないようなメカニクスが、実験と調査にたいしてたしかにこたえてくれる感覚」について、まとまらないながらもすこしだけ。 科学と工学 まず、これに類する感覚が述べられたブログの記事を読んだ…

『ユニコーンオーバーロード』と「デッキ構築」、あるいはメカニクスの抽象化について

以下の記事を読んで気になったことがあって、それについてちょっとだけ。 ユニコーンオーバーロードのバトルシステムが素晴らしかったのでそのヤバさを説く|だらねこ 同記事では『ユニコーンオーバーロード』について、アトラスの山本氏の発言を引きつつ「…

お前らの言うImmersionのニュアンスがわからない

自分のやっているビデオゲームの話を読みたくなって、ときにはRedditなどでおこなわれている雑談を眺めたりすることもあるのだけれど1、そのなかで、英語圏のゲーマーがimmersionとかimmersiveという語を使っているのをしばしば目にしてきた。「このゲームへ…

2024-03-04

「継続」の偉大さについて考えるわけですよ。「齢を重ねるごとに、なにかを続けていくことの困難さ、そしてそれに打ち克っての達成というものがつねにあることが身に沁みる」だなんてのは、なんのおもしろみもねえよく聞く話ではあるんですが、じっさいきっ…

2024-02-15

昨年末にバルダーズ・ゲート3の日本語版がリリースされ、それからずっと没頭してしまっていたため、とても世情にうとくなっています。さまざまなおもしろいものごとがうまれてはすぎゆく——しかもすばやく!——この浮世にて、2ヶ月弱ほどずっとBG3をやっている…

わたしたちが『ビデオゲームの美学』を読むこと

フィールド上で方向転換する。コンピューターが接続されているテレビ画面の左上四分の一に草原が映っている。画面の下半分はぼくら一同に関する情報で埋め尽くされている。ヒットポイント、アーマーポイント、スペルポイント、装備中の武器。画面の右上四分…

2023-12-14

いろいろあるのですが、呪術廻戦アニメ2期が毎回すごいと思ってニタニタしてたらほんとにずっとすごすぎてだんだん真顔になってきてることだけ書き残しておこうとおもいます

デジタルゲーム研究 - 吉田寛

デジタルゲーム研究作者:吉田寛東京大学出版会Amazon 本書の構成は下記のとおり。あとがきでも触れられているとおり、カテゴリに分けられつつ、それを超えて全体におおむねクロノロジカルに並べられた論文集。なお、第1章の初出は2008年である。 序——ゲーム…

2023-11-14

Cory Doctorow: Science Fiction is a Luddite Literature – Locus Online ドクトロウがこんなこと言っており、まあそらそうやろと思ってずっといろいろ考えてたのだけれど、いっこうにまとまらないのでいったんいろいろ挙げるにとどめる。 ピンチョンの"Is …

2023-09-06

ご無沙汰しております。アーマード・コア6のためしばらくインターネット活動が弱まりそうです。よろしくお願いいたします。

The Cosmic Wheel Sisterhood(または一人称の占いとしてのアドベンチャーゲーム)

store.steampowered.com ストーリーとしては、「とある理由から遠い小惑星に流刑された魔女が、禁忌とされる存在(ベヒモス)と契約を結び、オリジナルのタロットカードの作成、そして友人その他の魔女たちとの会話および彼女らを対象としたタロットによる占…

2023-08-28

がんに効くは本当? 治療・薬・食事法の誤情報 亡くなった患者が信じた“エビデンスが乏しい方法”とは - #がんの誤解 - NHK みんなでプラス こういうのを見かけるたびに思い出すことがあるなとおもい、それをブログにでも書くかってなってたんだけど、調べてみ…

2023-08-18

最近読んだ本とか、そのほかもろもろ。いくらかはローカルの日記から、いくらかはBlueskyの投稿から引っぱってきつつまとめる。 照井『コンピュータは数学者になれるのか?』読んだ。計算機科学っぽいもの——とくにプログラミング言語の基礎概念まわり——に興…

2023-08-09

昼飯をどうしようかなと思っていたところで、ゲリラ豪雨ではない、ざばざばいう、それでもどことなく慎みのあるにわか雨が降りはじめて、外に出るのも面倒なので昼休みのあいだに思い出話でも書くかなと思ったわけです。おそらくTwitterでも書いたことがある…

真理・政治・道徳 - シェリル・ミサック

ここでも何度か言及しているとおり、『プラグマティズムの歩き方』がおもしろかったのでこちらも読んだ。副題は「プラグマティズムと熟議」。 真理・政治・道徳―プラグマティズムと熟議―作者:C・ミサック名古屋大学出版会Amazon 「シュミット(に代表させた…

2023-07-26

ブログを書くだけだと検索に乗らないっていうのがそれなりに痛感されて、ちょっと前にTwitter1にいろいろ投稿したりしていた けれどもそこからTwitterに戻るということもなく、一方でBlueskyでぽつぽつ投稿するようになってしまった 最近ブログを書いていな…

「鏖戦」ひとり読書会にむけて(3のその2)

メタフィクション云々はまた後日! まとめは下記。今回は第3節の続き。 murashit.hateblo.jp 「阿頼厨は上部球体をかかげ、その表面に十字形に並ぶ五つの眼根【げんこん】で外界をさぐった」ではじめて阿頼厨の見た目が披露されるのだが、相変わらずよくわか…

2023-07-06

駅から会社へのみちに橋と坂があり、橋の話は橋の話でまたそのうちやりたいのだけれど、だから今日は坂のほうの話なんですけど、その坂ってのがそれなりけっこう急な坂ではあって、のぼりきったさきにはでかい企業の本社があるなどしており、朝の通勤の時間…

ゲームをプレイする正しいやりかた - C. Thi Nguyen

どんなときに「自由度」といいたくなるのかのときに気になっていたグエンの“The right way to play a game”1を読んだ。個別の記事を立てるほどでもないのだけれど、それでもメモを残して公開しておきたい(詳しい人がどう読むのか知りたい)。表題のとおり「…

2023-07-04

ひろがるスカイプリキュアのED2がめちゃくちゃいいわね。 白湯をね、飲むんですよ。いつごろから習慣になったのかなんてもはやおぼえていないのだけど、仕事ちゅうの水分摂取に白湯を飲むことがすっかり常態化しており、いかにも健康そうにみえるかもしれま…

続・メタフィクション表現の四分類についてのメモ(その1)

こないだの記事に応答をいただきました。 proxia.hateblo.jp 最終的にはとくに大きな意見の相違などは出てきそうになく、しかもかなり投げっぱなしだったところを補っていただいておりめちゃくちゃありがたい(ふつうに申し訳ない)んですが、いずれにせよ自…

メタフィクション表現の四分類についてのメモ

ネマノさんの Steamで遊べるメタフィクションなインディーゲーム入門 - 名馬であれば馬のうち を読んで……といってメイン部分はストフィクですでに読んでたのですが、読んで、おもしれーな! で、ストフィクのときにはなかった「おまけの追記:メタフィクショ…

「鏖戦」ひとり読書会にむけて(3のその1)

最初にも言ったとおり今回はいったんベア=酒井の共作みたいなものとして読むつもり(なぜならめんどくさいから)なので踏み込まないが、ベアによる原文はそこまで「工夫」がなく、酒井訳独自の部分が多々ある1ことにはいちおう注意しておきたい。……のだけど…

「鏖戦」ひとり読書会にむけて(1〜2)

まずは順なりに読んでってあとからまとめることにしようかな。付番は以下に準ずる。 murashit.hateblo.jp なお、先を読んではじめて判明することについては、基本的には「わからない」ものとする……つもりなんだけど、ゆうても読んじゃってるわけで、かなりバ…

2023-06-28

最近見たもの読んだものからいくつか。 なんの前フリもなく「鏖戦」の話をはじめてしまった のは、はたしてむかしより多少は「読める」ようになったんだろうか、なんてことをどこかのタイミングでためしてみたかったからなのだけど、とはいえこういうのが続…

「鏖戦」ひとり読書会にむけて

周知のとおりかなりイメージしづらい描写ばかりではあるんだけど、読者として「だんだんわかってくる」こと自体がテーマともかかわってくるので……という言い訳のもと、(ベア=酒井の共作というとらえかたで)今後気が向いたときにでもだらだら読んでみたい。…

どんなときに「自由度」といいたくなるのか

経緯 もともとこういう語の使いかたには興味があったし、だからディスコエリジウムをだしにロールプレイについてうだうだしたときにもすこし触れてはいた。そのうえで、上野「ゲームにおける自由について」1およびそれに対する松永さんのコメント、あるいは…