そろそろ高橋源一郎について一言言っておくか

昨日の日記で中途半端なことしてしまったので改めて。高橋源一郎というとどうも「室井佑月の元旦那でっていうかバツ3で競馬好きで書評がいちいち信用ならなくて全共闘の残りカスの小うるさいうさんくさいおっさん」みたいなイメージしかなかったりするかもし…

コレラの時代の愛 - ガブリエル・ガルシア=マルケス

最後まできちっと「コレラの時代の」愛であったことには感心させられましたがそれはともかく。 自分が老いることに対するイメージがいまいち湧かなくて、そのためか軽薄でネガティブな印象ばかりが自分の中にはあったのだと今更ながらに気づかされた。肉体的…

だいにっほん、おんたこめいわく史 - 笙野頼子

世の中いろんな怒り方をするひとたちがいて、僕はどうせ怒るならおもしろおかしく怒りたいものだと考えたりしているんですが、まあもちろん怒るってな具合の話になるといかんせん僕はまだ子供ですので、そうなかなかうまくいくものじゃあございません。まあ…

ハローサマー、グッドバイ - マイクル・コーニイ

お話のオチというのは(もちろん不可欠ではないにしろ)時には大切なもので、そういうものを書いたり喋ったりする人はまさにそこに向かって全てをチューニングしていくわけだ。そういう意味でまず、おすすめなSF小説なのだけれど。だからといって彼らがその…

南回帰線 - ヘンリー・ミラー

あまり沢山は書けそうにありません。僕が性や郷愁や言葉についてばかり喋っている理由とかその結果として出てくるであろうものたちが、あんまりにもそのまんまの形で、あんまりにもタイミングよく示されてしまったものだから、ちょっともう。馬鹿みたいな話…

夜行巡査 - 泉鏡花

夜行巡査というか、岩波文庫の緑、鏡花の初期短編集。 恥ずかしながら鏡花を読んだのははじめてでした。僕は馬鹿なので、鏡花やら紅葉やらの小説なんて「小説」じゃないぜ!などと軽蔑していたんです。読まないでこういうこという奴は馬鹿にしていいと思うの…

ユリシーズのおはなし - Ep.2 ネストル

一回目はこちら。→d:id:murashit:20080804#1217874442 誰も見てなくても続けるよ、このシリーズ。続けてやるよ! 主な登場人物 スティーヴン・ディーダラス ギャレット・ディージー あらすじ スティーヴン(以下S)は勤め先の学校で古代ローマ史の授業,つづ…

ユリシーズのおはなし - Ep.1 テレマコス

連載ものとかはちゃんと本家でやった方が続くということが分かったので、こちらも記載することにしました。 ジョイス「ユリシーズ」のあらすじとか諸々を纏めておいて、再読するときの助けにしようという企画。 第2挿話までしかできてないという、3日坊主に…

悲しき熱帯 - クロード・レヴィ=ストロース

前半部分を1週間ほどで読んだのに比べ,後半はえらくゆっくりと,結局2か月くらいかかりました.読み終えたのは帰りの飛行機の中. 僕はときどき「誠実さ」という言葉を便利ワードとして使ってしまいがちなのですが,この本について述べようとする今このとき…

ティファニーで朝食を - トルーマン・カポーティ

実はオードリー・ヘプバーン主演の映画は見たことがないのです。ごめんなさい! 「ティファニーみたいなところ」へのあこがれがなんだか眩しくて、ああ、これが乙女なのね、だなんて。*1そう、この物語の主人公であるホリーはね、ふしぎちゃんなの。やること…

西瓜糖の日々 - リチャード・ブローティガン

たまには最近読んだもの以外の本についても書いてみたいなと思いました。それでこれ。僕はあんまり二度三度と本を読み返すことをしないほうで、その数少ない例外というのがこの「西瓜糖の日々」なのです。*1 *2 西瓜糖の世界はとても淡泊で、生活という生活…

ソラリス - スタニスワフ・レム

なんだか濃いものが煮立っているわりに、あらすじだけ追うとこれ、ラノベにだってできそうな気がするぜ!なんてキャッチーさも持ち合わせてくれている一冊。訳者による解説*1にもあるとおりまさに重層的な小説で、そのことがおおきな魅力の一つとなっていま…

ガラス玉演戯 - ヘルマン・ヘッセ

全編通してカスターリエン的なものとそうでないものとの二項対立のために捧げられた小説じゃないかと感じました。それにしても、あんまり感想っぽいものがネット上で見つけられないのはなぜなんだ。 カスターリエン その二項対立って何さってことを言う前に…

文学部唯野教授 - 筒井康隆

久々に筒井康隆の小説を読んだけれども、やっぱりこういう俗物を書かせると右に出るものはいない。よく分からん安心感すら覚えてしまうこの面白さ。恐ろしいなあ。 内容としては、そういった物語部分と、唯野教授の文芸批評についての講義の二つから成ってお…

地下鉄のザジ - レーモン・クノー

「文体練習」で有名なクノーのこれまた代表作。 オウムの「緑」の口癖である『喋れ、喋れ、それだけ取り柄さ』という言葉を待つまでもなく、印象としては「これって落語みたいだなあ」といったもの。フランス文学だってのに、読んでいるそのときの気分は紛れ…

大胯びらき - ジャン・コクトー

一瞬すごく猥雑なタイトルに見えるんですが,澁澤龍彦はこれ,狙ってやってるんでしょうかね.・・・じぶんにとっての「大胯びらき」のことを思い出したりもしたのはまあ,どうでもいいんですが. 恋の絶頂のその前というのは時代によっても人によっても違うの…

表徴の帝国 - ロラン・バルト

図版が印象的.そして,日本人じゃあ日本のことここまでかっこよくは書けないよなあと思った. というのも,これって日本をダシにした表現(エクリ)遊びやん!と感じたからなのです.歴史なり典拠なりを意図的に無視し,表徴について語るためだけに日本を使…

悲しき熱帯 - クロード・レヴィ=ストロース・・・の,前半

まだ生きてるのか.今年で100歳とは・・・すごいな. ・・・ともあれ前半(第1部〜第4部)だけ読んだ.随所随所にしびれる文章がちりばめられていて,ここまでくると逆に危ないんじゃないかと思ってしまうくらいだった.小説以外では「錯乱のニューヨーク」いらい…

葬儀の日 - 松浦理英子

19歳でこんなの書かれたら,もうたまりませんな. さいしょの「葬儀の日」と,後のふたつ「乾く夏」および「肥満体恐怖症」はぜんぜんべつもの. 「葬儀の日」はなんだもう,密度が高すぎてクラクラする.情景描写というのがそぎ落とされ,こころがむき出し…

都市/建築 フィールドワーク・メソッド - 田島則行,久野紀光,納村信之

いい本でした.都市だとか建築だとかそういったものに少しでも興味を持つ人すべてにお奨めしたい. 都市について,何に注目し,あるいは切り捨て,その対象をいかにして観察し,記述・変換していくかという,都市を対象としたフィールドワークの方法論につい…

人類は衰退しました - 田中ロミオ

こざっぱりしていて,ロッテリア*1で一気に読み切ってしまったこの一冊. そう.こざっぱりとしていた,というのがその印象.ラノベってものを読んでみなくちゃ,なんて思いながらはじめて手に取ったのが「涼宮ハルヒの憂鬱」だったのだけれど,そのときに感…

半島 - 松浦寿輝

繊細だけれども,それだけに強い印象をのこさない小説だったように思う. だってアレですよ,中年男が仕事を辞めて隠居しようかとかなんとかいう話なんだから,そりゃもうもちろんのこと派手になんかなりようが無く.それでもこれが小説としての強度を保って…

とゆうわけで

こんなのつくりました. しろうとはしろうとなりに,いろいろやってみようと.

ユリシーズ - ジェイムズ・ジョイス

ついに読了.結局読み切るまでに1年半かかってしまいました.この小説については(長い時間をかけて読んできただけに)いろいろ書いてみたいことがあるのですが,とりあえず今は読み切ったという感慨がいちばんおおきいです.おもしろかったかというと,どう…

わたくし率 イン 歯ー、 または世界 - 川上未映子

「わたし」「わたくし」「私」という三項についてどう考えたか,というのはとりあえず置いておいて,言葉について考えたこと.町田康を筆頭にこういう文体をつかう人というのは今ではけっこう多く見られるので,そのことじたいに驚いたなんてことはそりゃあ…

アンドロイドは電気羊の夢を見るか? - フィリップ・K・ディック

さっき読み終わった。 いつもは数冊本を鞄に入れて持ち出さなければ落ち着かない性分*1にもかかわらず珍しく手ぶらで出かけた今日に限って、待ち合わせた友人が2時間も遅れるなんて言い出したので、つい買ってしまいました。いつか買おういつか買おうと思い…

鏡のなかの鏡 - ミヒャエル・エンデ

カシオペイアの背中の「オワリ」の文字にすごくほっとして、でも、終わってしまったことが惜しくてたまらなくなったあなたに。バスチアンが泉で真っ裸になってることがどうしても気になって仕方がなかったあなたに。 「モモ」にしたってそうだし「はてしない…

競売ナンバー49の叫び - トマス・ピンチョン

初めてのピンチョンである。ちゃんとしたストーリーがある数少ない作品のうちのひとつ(!)だとか言うけれど、それでも、大丈夫かなあ、なんておそるおそる読み始めた。 結論から言えば、まったくもってそんな心配は無用だった。こいつはすごい。*1 五感の描写…

百年の孤独 - G・ガルシア=マルケス

今年が2007年なのか2008年なのか2009年なのかあまりよく飲み込めないまま新年も10日ばかり過ぎて、いったい平成何年なのかということにいたっては、尋ねられてもいまだ阿呆のような顔をするしかいない状態です。それでも日本人なのか。誰か元号と西暦のうま…

アブサロム、アブサロム! - ウィリアム・フォークナー

でもってもうひとつ。ゆっくりゆっくり読んでいたら、結局読了までに1年近くかかってしまった。 そもそも中上健次がすきで、その流れでよし挑戦してみようとした初フォークナーがこれ。はじめは読むのが苦痛でしかなかった。突然現れる鮮やかな比喩だとか、…