ザヴィヌルとわたくし

ジョー・ザヴィヌルが死んだらしい。75歳*1だというからそりゃまあ、あってもおかしくないこと。さすがに寂しいとかそういう感情がそれほど巻き起こるわけでもないが、なんだか少し不思議な感じがする。


ところで、僕はザヴィヌルの最高傑作は"In a Silent Way"だと思っている。
In a Silent Way
マイルスのリーダー作ではあるけれど、実質的にはザヴィヌルが主導権を握っていた、というのはわりかし有名なはなし*2
これ、60年代のクインテットでショーターが果たした役割と同じようなものだったのだろうかと漠然と思っていたが、今考えてみると一緒にいる期間が違いすぎることに気づく。ザヴィヌルがマイルスのバンドで活動していたのは1969年の、しかもスタジオ盤のみなのだ。
それだけの付き合い*3しかなかったというのに、これほどマイルスのトランペットを生かすことに成功しているとなると、本当に驚くほかない。僕にとっては、マイルスのトランペットを聞きたかったら、"Porgy and Bess"かこれか、というくらいだ。
すげえよザヴィヌル。


しかしそれなのにマイルスはこの後この方向を推し進めるようなことをしなかった。
"Bitches Brew"もやはりそのザヴィヌルの影響下にあるものの、そのベクトルというのは明らかに、明らかに違いすぎる。特にリズム面でそれが顕著ではある。
Bitches Brew
こうやすやすと自分の手に入れたスタイルを捨てて、次へ次へと音楽を革新していくマイルスてのも、僕なんかが言うまでもなく、なんかもう滅茶苦茶すごい人なのだ。


・・・と、ほおっておいたらすぐにマイルス礼讃みたいになってしまうので自粛するけれど、ともかく、1968年あたりからのマイルスが模索し始めたいわゆる電化マイルスへの一番の起爆剤となったのは、チック・コリアでもデイブ・ホランドでもなく、もちろんハンコックでもなく、このザヴィヌルであったというのは、この"In a Silent Way"からも間違いない。はずだ。

安らかに眠ってくださいな。

*1:そんなに爺さんだったのか

*2:と、もちろんテオ・マセロも忘れちゃいけないんだろうが、それはまた別の話

*3:バンドとしての、て意味で