シャイニング

でもってキューブリック.とかく相変わらず完璧な,隙のない映画を作る人だというのがまず一番の印象.色彩感だとか,あの軋むような高音が流れてくるタイミングとかいろいろね.


キングの原作がどうあれ,この映画の中で描かれるのはほとんどすべて「子供の空想」とか「狂気の引き起こす幻覚」みたいな言葉で済ますこともできるものにすぎないところがミソかなあ,なんて思った*1.これはおなじキューブリックの「アイズ・ワイド・シャット」にも言えることで,どちらにしても非現実的なこと(オカルトだったり秘密結社みたいなものだったり)がさもありなんと描かれるのだがそのくせ何一つ決定的なものは現れず,すべて主人公の/それを見る僕たちの頭の中で空想だけが膨らんでいき,結局のところ解決しないままそれらの空想を裏切るように日常に戻っていく*2.そういったところに狂おしいような,そんな魅力を感じた.
ただしこれが「ほとんどすべて」であることにも同時に注意したい.これは僕が最後まで引っかかっていたことでもあるのだけれど,幻覚で済ますことのできないできごとがおそらくたった一つだけこの映画の中にはある.それが「ジャックが閉じ込められた食物庫から逃げ出す」というもの.これだけは「ホテルの邪悪な意志」意外に説明のしようがない.制作者がそれに気づかなかったなんてことがあるわけもなく,とうぜん意識的にやっているのだろうが,これはいったいどういうことなんだろうか.


・・・もしかして,僕の変な勘違いなのかな!?誰か教えてください!

*1:だからこそキングが嫌ったのかもしれない

*2:ビルとアリスはじっさい最後にそうなったのだし,ダニーとウェンディだっていつかは日常を取り戻すことになるはずだ.