表徴の帝国 - ロラン・バルト

図版が印象的.そして,日本人じゃあ日本のことここまでかっこよくは書けないよなあと思った.

表徴の帝国 (ちくま学芸文庫)


というのも,これって日本をダシにした表現(エクリ)遊びやん!と感じたからなのです.歴史なり典拠なりを意図的に無視し,表徴について語るためだけに日本を使っているんじゃないだろうか.
そうだ!日本人はもっと怒ったっていいんだぞ!

・・・というのは半分冗談で,さすがに憤りなんてこれっぽっちも感じませんでした.が,それでも目の付け所の鋭さには唸らされます.日本人であるはずの自分が,日本的な精神について,なんども勘違いを起こしそうにさえなりました.


つまり,これを読んでロラン・バルトを「日本文化の理解者」と呼ぶのは,一般的な「理解者」の定義からすれば大きく外れている間違った呼び名であるというわけです.むしろ,だからこそ,本書で我々日本人が知るのは「西洋人」の真の姿であるはず.決してそれは「日本人」のそれではない.
そういったことよりも面白いと感じたのは,やはり日本文化にひそむ記号の読み取り方です.じっさいバルト自身もそれを主眼としているようで,まさに表徴について述べるための道具として偶然日本が選ばれたと言うだけのことなのでしょうが,こういったシニフィアンシニフィエの関係づけ方というのは目から鱗でありました.これってなにより応用範囲が広そうでとても魅力的なのです.


というわけで,結局「表現(エクリ)遊び」というのがいちばんの印象だったのでした.