どっとはらい

端的に言えば。

いい文章、が書きたかった。いい文章といってもそりゃあ色々あるけれど、別になんでもいい。鮮やかな文章、匂い立つような文章、生々しい文章、郷愁、思春期、性、糞尿、文章のための文章、嬉しくなるような、単純な、グルーヴィな、誠実な文章。が、書きたかった。

「筋」はわりとどうでもいいな、とか思っていた。錬金術がしたいんじゃないんだよな。それはあくまで組成物であって、僕は原子を創造したかった。


んだけどなあああ!


本を読んでれば勝手にできるようになるなんて考えてたのがそもそもの間違いだと思ったねワスは!*1

僕の頭の中の3Dカスタム少女*2がいつも言ってたのも無視して読んでいたのは結局そのためであって、全くもって、嘘偽りなく、それ以外の目的なんて一つもありゃしない。偉大な文章工場にはそれにふさわしい巨大なベルトコンベアーが流れていて、「ライン」と呼ばれていた。*3

工員である僕は、しくしく痛む右肘を庇いながら、グレゴール・ザムザが流れ、葉蔵が流れ、先生が流れていくのをぼうっと眺めていた。すぐ目の前をスーパーマーケットの天皇が流れていった、フョードルは既に死んでいた(もちろん流れていったが)。羊はたくさん流れていったけれど、よく見ると着ぐるみみたいな奴から電気仕掛けのやつまでいろいろだった。ハツカネズミも・・・流れていったというよりベルトコンベアの上を走っていったみたいだった。ブエンディアとかサトペンとか竹原とかが塊になってどんどんどんどん流れていった。圭子とシモーヌも流れていった。あの「おれ」もこの「おれ」も流れていった。もう覚えていないあれやこれやも流れていった。

流れていったったら流れていった。水洗トイレみたいに流れていった。右肘は今でも痛い。

*1: (c)

*2:勢いで買った

*3: (c)