Sun Ra 70枚くらい聴き倒し(1)

ちょっと前にやってたなんかあの、サン・ラでジャズをどうこうって話も早々に破綻してしまいましたが(やっぱり!)、それでもやはり世にサン・ラを広めねばならないという使命のもと、我が家に眠る彼の作品(70枚くらい)を年代順に紹介していくことにいたします。評価は☆(1つ〜5つ)で。とりあえず今日のところは3枚ご紹介。
※各種データに関しては、このすばらしいサイトを全面的に参照しています。→http://www.the-temple.net/sunradisco/
※第2回はこちら。→http://d.hatena.ne.jp/murashit/20081013#1223915910

1枚目:Spaceship Lullaby

Spaceship Lullaby 1954-60
1955。
サン・ラ名義としては最初期の録音で、タイトル曲である1曲目からしっかりサン・ラ節が炸裂しているあたりはファンとしてニヤニヤせずにはいられません。
とはいえそういった後への宇宙的展開を予感させる曲ばかりかと言えばぜんぜんそんなこともなく、中心は明らかにスウィング的な歌モノであって彼にとって「声」はもっとも重要視されるべきものの一つであることを改めて認識させられます。とはいえ子守歌みたいな下手コーラスが織りなす子守歌みたいな音質の子守歌みたいに優しい作品でありますから、サン・ラを聴きたい!という人にはさほどお勧めしませんが、彼らの前衛的な作品に疲れてしまった時などに時折戻っていきたいと思わせられる作品でもあります。

  • 初心者にお勧め度:☆☆
  • スペース度:☆
  • 個人的お気に入り度:☆☆☆

2枚目:Deep Purple

1948-57。友人にCD-Rに焼いてもらったんだが、なぜかA面のぶんしか入ってなかった。
聴き所はやはりM3"Dreams Come True"でしょうか。後々何度も言及することになるであろうパット・パトリックやジョン・ギルモアといったメンバーが既に参加して(しかもギルモアなんてふっつうのソロをとって)いることにも注目したい。
M1はスタッフ・スミスというわりかし有名(らしい)ヴァイオリニストをフィーチャーしている曲で、サン・ラの妙に歪んだ和音との相性がなかなか良くてこれが意外。しかもサン・ラはハモンドのSolovoxというエレクトリックピアノのはしりみたいなの をちょっとだけ披露しており、そのことにもかなり驚かされます。1948年にしてはちょっと先駆けすぎてやしないか。
M2はピアノでのインプロ。M5-7はいずれもスタンダード。この頃には既にソロ以外でも不協和音が目立ってきていますね。

  • 初心者にお勧め度:☆☆
  • スペース度:☆☆
  • 個人的お気に入り度:☆☆

3枚目:Sun Song

Sun Song
1956。最近の再発盤のライナーをたしか菊地成孔が書いていたはず。
事実上のサン・ラ宣言とも言える記念碑的な一枚。これまでサン・ラが一人ピアノでやっていた宇宙的実験をついにビッグバンド全体で奏ではじめます。ブルースという深い深い泥沼に片脚ずっぽり踏み込みつつ新しいジャズを切り拓こうとする姿は、ミンガスの"Pithecanthropus Erectus"*1やモンクの"Brilliant Corners"といった同じ56年の不朽の名盤たちと比べてみても遜色がありません。おうよ、断言してやろうじゃないの。

・・・あれこれ言葉を並べるよりも聴いてもらった方が早いか。アルバムの中で僕の一番好きなM1"Brainville"です。

このガチャガチャしたおもちゃの宇宙船みたいなところがたまらなく愛おしいじゃありませんか!

  • 初心者にお勧め度:☆☆☆☆☆(サン・ラに興味を持ったならまずはこれを。)
  • スペース度:☆☆☆
  • 個人的お気に入り度:☆☆☆☆☆

*1:「直立猿人」は直訳にして名邦題だと思う。