Sun Ra 70枚くらい聴き倒し(2)

こういうのははじめの勢いのあるうちにやってしまうに限ります。
※第1回はこちら。→http://d.hatena.ne.jp/murashit/20081011#1223756744

4枚目:Angels and Demons at Play

Angels & Demons / Nubians of Plutonia
1956-1960。好きなジャケ。名義はSun Ra and his Myth Science Arkestra。
A面4曲はいずれも1960年の録音。Sun Songのいちばんさいごで一際異彩を放っていたタイトル曲のジャングル的な冗長さが全面に押し出されており、キツい人には修行の時間にしかならない恐れも。
B面4曲は1956年、Sun Songよりもやや前の録音で、さきほどと一転してひじょうに馴染みやすいものばかり。M5,6はどちらもBPMが240を超えてくるような軽快きわまりない曲。テーマなんてもうみんなぐだぐだなんだけれども、ソロはやはり素晴らしい。この手の曲はこの後紹介する作品でもちょいちょい出てくるのだけれど、個人的には初期サン・ラの醍醐味のひとつだと思っています。そしてM8はエリントン的な黒いドロドロ感を存分に味わえる楽しすぎる1曲。

  • 初心者にお勧め度:☆☆
  • スペース度:☆☆☆
  • 個人的お気に入り度:☆☆☆☆

5枚目:Super Sonic Jazz

Supersonic Jazz
1956。
彼自身によるレーベルSaturnのいちばん最初のLPとして57年に発表された*1作品。レーベルで出していたいくつかのシングルを再録している。Sun Songがやや懐古的な要素も持ち合わせており*2それだけに過去の彼の音楽との対比がドラマチックに感じられるのに比べると、こちらは既にそこからもう一歩進み、しっかり進むべき方向を見据えた作品といえるのかも。
そういった特別な意味を持ってはいるのだけれど、内容じたいはなんてこたない、ふつうの秀作。特色がないと言えば・・・そうかもしれないなあ。

  • 初心者にお勧め度:☆☆
  • スペース度:☆☆☆
  • 個人的お気に入り度:☆☆

6枚目:Sound of Joy

Sound of Joy
1956。
M2の"Overtones of China"(タイトルから想像する通りの曲!)、M7"Saturn"(とにかく半端無くかっこいい。マジでマジで。)、M9"El Viktor"(勇ましいテーマ、そしてドラムソロに痺れる)など、ベクトルは違えど粒ぞろいの1枚。じっさい僕の周りでは"Saturn"を聴いてサン・ラにはまってしまったという人も多く、そうだな、メッセンジャーズの1960年の"A Night in Tunisia"がその勢いの良さゆえに大好き*3、というあなたならこれもきっと好きになれるはず。
まあ似てるのは勢いだけなんだけども。
Sun Songよりちょっとクセがあるものの、既にサン・ラの魔力に取り憑かれたあなたにとってはどれも個性的で魅力的な曲ばかりに感じるはず。2枚目としてはなかなかお奨めできます。

  • 初心者にお勧め度:☆☆☆☆
  • スペース度:☆☆
  • 個人的お気に入り度:☆☆☆

7枚目:Jazz in Silhouette

Jazz in Silhouette
1958。
後にそこここで登場することになる"Images"や"Enlightenment"といった重要曲の最初期のバージョンが聴ける貴重な1枚。
サン・ラの作品ってのは「なんでこれリテイクしないの!?」という曲が紛れ込んでいたりすることが非常に多いのだが、そういった意味合いではこれは珍しく非常に隙のない作品。上で出てきた"Saturn"もここではかなり洗練されてきている。全体的にアーケストラがこの方向性に慣れてきたということなのだろうか。逆に言えば、意外性のようなものはやや薄れていると言えなくもない。

  • 初心者にお勧め度:☆☆☆☆
  • スペース度:☆☆
  • 個人的お気に入り度:☆☆☆☆

8枚目:Sound Sun Pleasure

Sound Sun Pleasure
1958。CDでは後半に先日紹介したDeep Purpleを収録。名義は"Sun Ra and his Astro Infinity Arkestra"。
いきなりの'Round Midnightに驚くが、それもそのはずM5の"Enlightenment"を除いてすべて他人の曲。その"Enlightenment"にしてもしっかりとオーケストレーションを施されていて他の曲の間にあっても全く違和感を感じない。シメが"I Could Have Danced All Night"(=「踊り明かそう」)なんだからもう完璧である。
つまり普通のいわゆる「サン・ラの音楽」ではない、正装の音楽。なかなかいいんだけど、まあ、サン・ラでなくてもいいような気はする!

  • 初心者にお勧め度:☆☆
  • スペース度:☆
  • 個人的お気に入り度:☆☆☆


というわけで今日は"Angels and Demons at Play"を聴きながらお別れです。また次回。
http://www.youtube.com/watch?v=qw3Trh10Jr8 *4
つーかなんだこのメガネ!全体的にうさんくさすぎる!

*1:Sun Songは別のレーベルから同じ57年に発表されており、録音はSun Songが56年の7月とやや早いものの、発表が早いのはSuper...のほう。また、Angels...は当然60年代になってから発表されもの。

*2:以前に書き溜めていた曲や、彼の作曲ではない曲も入っている

*3:全然関係ないけど、誰のどの「チュニジア」が好きかってのはちょっとした話のタネになると思う。

*4:埋め込みが無効だったのでリンクで