今更帰省日記

大晦日、実家の炬燵に座り阿呆のような顔して紅白歌合戦におけるSPEEDの勇姿を目に焼き付けていたところに、玄関のチャイムが鳴り、幼稚園いらいの友人U君の到着を告げる。父も母も毎年のことなので全く気にも留めず「ああU君一年ぶりじゃなあ、げんきー?」などと普通に挨拶、U君も「どうも毎年すみません」と返す。そして今年も僕らは離れの二階への階段を上る。

我が家に生意気にもデジタル放送が導入されて以来この部屋のテレビは使われたことがないらしく、なんとNHKが映らない。ちょっと待てよいまから肝心のPerfumeじゃないかと僕は苛立ち急いでチャンネルの設定を行う。薄ら笑いを浮かべてそれを見つめるU君。NHKが映ったときには当然Perfumeの出番は終わっている。終わり悪ければすべて悪し。今年一年この瞬間のために生きてきたというのにと悲嘆に暮れる僕を、薄ら笑いを浮かべながら見つめるU君。「お前Perfume好きじゃったっけ?俺はよーわからんわー。」ファック。お前にあ〜ちゃんの良さが分かってたまるか。お前みたいなゴボウ野郎にゴリラゴリラとわめかれるためにあ〜ちゃんは日々がんばってんじゃねーんだ。

仕方ないのでガキ使にチャンネルを合わせる。板尾の宇宙人。U君が爆笑する。僕も爆笑する。「ところで今年のM-1見た?」「あー、オードリーすごかったなー」「でもキンコンはねー」などとお笑い談義をするもいまいち満たされない。そこへ母がお茶を持って上がってくる。グッタイミン!「U君彼女できた?」「いやいやいやいや」これも例年通りのやりとり。「今年も笑い飯おもしろかったなー」と母が参戦、これは予想外。「まーまー、えーからさっさと下りてお父さんとテレビでもみよーりや!」

いきなり「ご母堂って言い方なんか好きじゃわー」とのたまうU君、あなたはいったい何をおっしゃっているのですか。「彼女といやあ、なんで君は大学2年の大晦日、その年にして初めて彼女が出来たっつーのを俺に報告してくれんかったんかねえ」毎年定期的に会っている唯一の友人どうしであるというのに(故郷で過ごした18年間は僕たちふたりのどちらにとっても黒歴史なのかもしれない)なぜそんな大事なこと言ってくれなかったのかと毎年繰り返し、僕は彼を責める。傷は深い。大学4年の夏に共通の女友達からその話を聞いたときには本当に驚いた。だというのにU君ときたら「そりゃおめーが高校2年の夏休みにな、俺が夏祭りへ行こうって誘ったときに断ったからにきまっとろーが。彼女と行くからっていってくれりゃー俺もそれで良かったのに、なんで『今年は俺行かんわー』なんて嘘ついたんじゃ?」……いやすまんあれは……その……

「おめーもえーかげんしつけえなー」「それはこっちの台詞じゃろーが」

なんという美しい信頼関係。こうしてヘイポーの叫びとともに2008年も暮れてゆくのであった。