2023-01-20、あるいは記憶のなかの京都

住んでいたのは15年ほど前なわけで、いくら古都とはいったって、現代日本における変化の速度の及ばぬわけもなく、ずいぶんと様変わりしているにちがいない。それに加えて「記憶のなか」だ。いろいろに改変されて事実と異なっているのも当然だろう。ジョイスのダブリンのような真似ができるはずもないけれど、ちょっと歩いてみようと思い立った。

とりあえずどこから始めるべきか。無難に百万遍の交差点だろうか。南西にあったみずほ銀行で、生まれてはじめての銀行口座というものを作った。その支店はいつのまにかなくなって、出町支店に変わったそれはいまも維持している。南東には立て看、北西には本屋。この本屋で『よつばと!』を買ったことだけ、なぜか覚えている。もちろんほかの漫画だって、ここで買ったことがあるはずなのだが。同じビルだか隣のビルだかの二階にタイカレー屋があってちょくちょく行っていた。北東側には……なにがあったっけ。すぐに知恩寺じゃなかったよな。

で、ここからどちらに向かう? 出町柳への細道を行くのが王道な気はするが、自分の住んでたアパートに近づくことになり億劫だ。東大路は? 下ってもしばらく大学の敷地だしこっちもパス。上ると……踏切のあたりにあったエロ漫画いっぱいの本屋の話をしなきゃならなくなるな。今出川通を西に向かっても橋を渡るまで特筆するものが(たく味以外に)なかったような気がするので、とりあえず東へ向かうことにする。

とはいえ何があったっけ。もちろん知恩寺はある。古本まつりやってたな。何度か足を運んだうちのいつかに、誰かの全集の一冊、みたいなのを無駄に買ったのだけほのかに覚えている。誰のだろう。進々堂はちょいちょい行ってたはずだけど木のテーブルの質感くらいしか思い出せない。それから鉄板の北部食堂、学食のなかではここがいちばん好きだった。サイドメニューにあったはずのもずく酢のことが突然思い出される。北門のちょっと先(いや、ちょっと前か?でも進々堂のすぐ隣とかではなかったはず)にも狭い喫茶店があって、なんだっけな、そこのピラフみたいなのがうまかった覚えがある。うまかったといえば、南側にある中華料理屋の酸辣湯麺もうまかった。こいつ食い物の話しかしてねえな。

そこからしばらくはかなり記憶が薄れて、白川通にむかってくねっと曲がってちょっと勾配があったんだっけか。ここらへんで特筆することといえば私設図書館(自習室みたいなところ)で、わりと居心地がよく、金に余裕があれば大学の図書館よりこっちという感じだった。あったかいお茶が飲みほうだいだったおかげなだけかもしれない。突然思い出したが、なんだったか自分の本を勝手に本棚に差して帰ったことがあったような。ごめんなさい。

とりあえず白川通まで来た。南に向かうと天一の本店があった……あった気がするのだが、いや、本店はもっと北のほうだっけ? 南にそもそも天一あったっけ? なにかの思い違いだろうか。ラーメン屋といえば、「あかつき」だっけか、あったな。ラーメン好きだな、一乗寺に入ったらひどいことになりそうだ。

そういったほうへと北上してくと、何度か使ったことのあるスタジオがあった、とある友人宅も東に入ったところにあった……気がするし、違った気もする。すべてが曖昧だ。ガケ書房があったのもこのへんだっけ。しゃれこみやがって。なんだかんだいってここでもいろいろ本を買ってはいたはずだけど、じゃあどれがそれなのかと言われれば、やっぱり一冊たりとも覚えていない。ほどなく造形大も見えてくる。ここで渋さのライブを見た……んじゃなかったかなあ。すべてが曖昧だ。

曖昧な食い物の話しかしてねえな。次回、造形大から一乗寺1


  1. こういうのはだいたい続かないんだよ。