ファミレスを享受せよ

なあ君、ファミレスを享受せよ

月は満ちに満ちているし

ドリンクバーだってあるんだ

ファミレスを享受せよ | itch.io

よかった。けど、いったいなんでだろう。絵や音楽の雰囲気がいいってのはもちろんそうなんだが、かといってそれだけで(たった2時間程度とはいえ)一本やりきれるかといえば、そうでもないはずなのだ。それこそ、「永遠の、深夜のファミレス」というテーマを聞いて、そのうえでスクリーンショットを見たときには、「はいはいそういう雰囲気のゲームなんでしょ」なんて、正直ナメてかかっていたところがあった。でも、主人公のキャラのせいかな、うまいこと裏切ってくれる。変に厭世的じゃないというか、いい具合にノリが軽い。そこにさらに、切り詰められたテキストとその演出のしかたがハマっていたってのはきっとありそうだ。「雑談」というか、ほかの人ととりとめもなく話すことを、ストーリーとしてもシステムとしても大事にしていて、対してそれほど重要でない「移動」みたいな要素を完全に落としていた快適さとか、そういうのもあったかもしれない。小説にするならちょっと長めの短編、漫画だと単行本一冊くらいの設定とストーリー(あえて分類するならSFだろう)で、他媒体だと序盤の下地づくりがダルくなってしまうところを「会話のネタが増えてく」ってシステムへの慣らしで補っていて、ちょうどその下地が十分にできたところで折よく話が動く。で、動きはじめてからはできごとが次々起こって、あるいは次々とタネ明かしがされて、その意味で「退屈」しなくなる。そういうバランスもうれしかったんだと思う。こういう、あえて言えば「テキストに毛が生えただけ」くらいの語り方にもかかわらず、その毛の生えた部分がしっかり効いてるストーリーテリングを見ると、やっぱビデオゲームっておもしろいなと思う。ラストに至って、もっとみんなと雑談したかったぜって名残惜しくなってしまった。でも深夜のファミレスだからってほかの客と雑談はしないか。しないけど、おすすめです。