雨でなくとも地を固む

告知だ!

例年どおり……というわけでは実はなく、前回は書けなくて、かついつもは秋の文フリだったのが半年持ち越して春になったわけですが、今週末5月11日に迫った文学フリマ東京401、A-61(南1-2ホール)にて、ねじれ双角錐群の第9小説誌が出ます。

タイトルは『Fafrotskies』すなわち怪雨ということで、あんなものが降ったりこんなものが降ったりすることをテーマにしたもののひとつとして、わたしもお話を書くことができました。告知ページはこちら:

https://nejiresoukakusuigun.tumblr.com/post/780068271507537920/fafrotskies

上記のページに超イケてる装画はもちろん紹介文も載っているのでまずはそちらを見ていただきたいところではありますが、わたしのほうからも一言ずつ感想を書くぜ。

せんせい、あのね - murashit

「いまもまだ『しん判』がどこかで見はっている気がして、ちょっときんちょうしちゃってます!」 ——山田先生絶賛! 第70回青少年虚構文コンクール・小学校低学年の部応募作!! ※応募時「まきもどされた小学生は気ままなセカンドライフをおうかする」に改題

おれのや。今回はトップバッターなんですけど大丈夫でしょうか。

トリジンタプル - 笹幡みなみ

空き教室で一堂に会した高校二年生、多田明莉、多田明莉、多田明莉、多田明莉ほか26名に、担任の穂波から投げかけられた疑問。穂波対30人虚々実々の対決はかくして幕をあけるが、穂波の講義は職員会議で中断され、板書も途絶する。多田明莉は何故多いのか。はやく、宿題やってねようね。

空から女の子がといったって、ドッペルゲンガーといったって、数には限度というものがあります。奇想ものの小品で、ちょっとした文学小ネタ(というか高校国語小ネタ)もまじえつつ、テンポのいい会話はいつもと相変わらず、そしてなんかすげえ爽やかに終わる謎の手管。青春ものとして完成されてる……。多人数の会話を書くのってむずかしいものだよなとつねづねおもうのですが、同じ人物が30人いてみんなで喋るなら、それが誰であってもいい。これって発明じゃないですか?

フィジカル・ドリームズ - 小林貫

虚構の霊峰「零富士」が見下ろす都市、re・フジ市に無数の手紙が降り注いだ。自由言語で記されたその手紙は、あらゆる言語が定型化されたre・フジ市の秩序を唐突に崩壊させる。呪われた手紙は誰かの意思か、あるいは夢か。

紹介文が胡乱すぎる。ネタバレになるためここではあまり詳しく言えないのですが、それほど長くはないお話のなかでサイバーパンクだけではないSF大ネタてんこ盛りになっているのがニクい。全体的に価値観がちょっとズレてるところがやっぱりおもしろく、だからこそオチに至り、これは悲劇なのか希望なのか、どう思われますでしょうか、というのをみなさんにも聞いてみたい。

怪雨の子 - Garanhead

諸君らは英雄に救われるのを待っている。パン食い競争での圧勝を非難されてもなお、何度も器用に学校の試験で七十点を記録してもなお、英雄は諸君らを見捨てない。地球は自壊へまっしぐら。英雄はテラフォーミングに尽力する。英雄は怪雨の子。関節の外れた世界にもたらされるのは祝福か、それとも。

中二病的全能感、自分は特別であるという感覚って、そうそう、こういう感じなんだとおもう。いってしまえば狂人の理屈ではあり、それでいてドロッとしすぎないスパスパした独白のなかで、(こちらはこちらでなかなか壊れた世界の)全貌が徐々にあきらかになってくるのが好きなんですよね。最後までしっかり自意識についてのお話として読まされてしまう感じ。

煙鏡ーーアビーテスカ血統列伝 - cydonianbanana

早世した《史上最強牝馬》テスコガビーは、じつは生きていた? ——ひょんなことから未来の血統書を手にした実業家丸瀬は、独自の配合理論によるサラブレッド生産事業に着手する。やがて約束の馬が大レースに臨むとき、彼らに血の因果が降りかかる。「駿駒」誌掲載記事で振り返る、丸瀬ファーム三〇年間の軌跡。

テスコガビーもの2だ! あやしげで衒学的な配合理論、しゅっとしたスポーツルポ文体、産駒を残さなかった現実の名馬の血統がもし……というロマンに、並行世界/ドッペルゲンガーものという大ウソを絡める、なんていうぜんぶがとにかくかっこよく、本誌のなかでも個人的イチオシです。虚実の混ぜ方が最高。

転がるね群、君に蟹が降る - 鴻上怜

そして、次の文学フリマが始まるのです。

どう紹介したらいいんだろうなこれ。鴻上さん(本作の登場人物)ってとにかく文章がうまくて、細かい機微の描き方もすごいんだけど、それを使って暴れてくるから困るよな。

そして、私たちの文学フリマは続くのです!


  1. 前回から会場がビッグサイトに変わっていて入場料も必要になったことに注意だ。わたしも前回行けなかったため、ビッグサイト開催への参加はじめてです。
  2. 才能というものに本人も周囲も狂わされる系のお話のなかでも非人間を扱うジャンルとされています。