地図と……

遊星歯車機関のnoteに「In Other Watersにおける地図と領土:「ミニマップはクソ」は本当なのか?」という記事を書きました。

note.com

『Citizen Sleeper』でも有名なJump Over the Ageの過去作『In Other Waters』を題材に、ビデオゲームにおける空間の表象についての話をしています。画面に映ってるのものはおしなべてメカニクスの表象であり、それは複数ありえて(というかたいていは複数であって)、それらを行き来しながらフィクショナルな空間での体験が編成されるんだよみたいな。

IOWがめちゃいいゲームだってこと、そしてオープンワールドのミニマップをそんな嫌わないであげてほしいってことあたりを伝えたくて書きました。あとやっぱね、一生に一度はボルヘス「学問の厳密さについて」をエピグラフにして「地図と領土」の話してみたいだろ!というのもある、ありました。みんなもあるよね。

この話をするなら世界樹の迷宮を扱えよというのはもっともですし、ダンジョンクロウラーというジャンルはある意味そのあたりがもっとも色濃く出てくるジャンルだとは思うのですが、うまく盛り込めなかったのが心残りだったりもしています。


今回は明示的に論文を引いたりとかしなかったのですが、このへんの「メカニクス–表象–プレイヤーの想像」みたいなモデルの元ネタとしてはたとえば以下があります。書きぶりにやや癖がある(なんか妙に押しが強い)論文なのですが、内容としては明快だと思う。とはいえそのまま使ったというには少々ひん曲げてしまってるところがあるな……。

Bakkerud, Frederik. 2023. “The Ontology of Game Spatiality.” Game Studies, 23 (3). https://gamestudies.org/2303/articles/bakkerud

あとは上記でも引かれているオーセットの以下あたりもどうぞ。これを収録している本(Ludotopia)自体はオープンアクセスになっていて、ほかにもいろいろ読めてお得。

Aarseth, Espen. 2019. “Ludoforming: Changing Actual, Historical or Fictional Topographies into Ludic Topologies.” In Ludotopia, edited by Espen Aarseth and Stephan Günzel. transcript.

なお、このへんは『ビデオゲームの美学』にあるような「画面に映るものは、メカニクスを表したり虚構的内容を表しつつ作り出していたりする」みたいなモデルとも両立するはず。


そのほか今回あんまり掘り下げられなかったところについて。

フィクショナルな空間のなかで「生きる」みたいな言い方については下記とか。これも収録している書籍(Virtual Interiorities)がオープンアクセスになっている(しかも3分冊!)。上記Ludotopia所収のGünzelの論文にもあるように、もとをたどればルフェーヴルあたりになるらしい。

Van de Mosselaer, Nele, and Stefano Gualeni. 2022. “Representing Imaginary Spaces: Fantasy, Fiction, and Virtuality.” In Virtual Interiorities: Book Three: Senses of Place and Space, edited by Dave Gottwald, Gregory Turner-Rahman, and Vahid Vahdat, 21-44. Pittsburgh, PA: Carnegie Mellon University: ETC Press.

操作にともなって生じる「身体化」みたいな部分も軽く触れてるのみだな。たとえば下記とかはRTSみたいにアバターがないゲームでもそういうある種のアバター性みたいなのが出てくるよって話をしててけっこうおもしろい(ホントかぁ?みたいなところがないでもない)。

Lee, Yen-Tung, Giovanni Rolla, and Cameron Edwards. 2025. “Body as Battlefield: Rethinking Avatarhood in Real-Time Strategy Games.” Phenomenology and the Cognitive Sciences. https://doi.org/10.1007/s11097-025-10121-3

ともあれこういうアバター性についてもうちょっと総説的にはやっぱりクレヴィヤーだろうということで、最近のものだと以下。電子版だと買えなくもない値段……のような気はする。します。ほかの論文もわりとおもろいのでおすすめではないでしょうか(グエンが編者になっていることもあるのか、なんか妙にスーツがフィーチャーされていてうれしい)。

Klevjer, Rune. 2025. “Avatarhood.” In The Routledge Handbook of Philosophy of Games, edited by C. Thi Nguyen and John R. Sageng. Routledge.

あとは地図学でビデオゲームに関わるところでは、Playful Mapping in the Digital Ageって本がこれもオープンアクセスになっててわりと面白く読める気がします。特に、平坦な地図と立体的な空間経験の間に生じる摩擦についてトゥームレイダーとアサクリ2あたりを扱った第7章“From Underground to the Sky”と、ビデオゲームにおけるマップを分類した第8章“(Mini) Mapping the Game-Space”(ただこれ、Inert×Superimposedのとこはかなり苦しいだろ)あたり。

同書の編者であるLammesの論文だと以下がわりとおもろかった。本書のイントロダクションで書かれていることの理論的背景についてもう少し詳しく述べたもの、みたいな感じになると思う。

Lammes, S. 2016. “Digital Mapping Interfaces: From Immutable Mobiles to Mutable Images.” New Media & Society 19 (7): 1019–1033. https://doi.org/10.1177/1461444815625920


そしてなんといっても、『Heterotopias』という、Jump Over the AgeのGareth Damian Martinらが出していたビデオゲーム批評誌?みたいなのがある。千葉さんがブログでちょっと触れてたとおり建築×ゲームみたいな切り口で、毎号ゲーム内写真がいっぱいでかっこいい。どうも元々建築畑の人らしく、なので空間に意識的なんやろなみたいなのが感じられるところでもある。Vol.5の特集が「Beyond Realism」だったりするのとかは今回の記事とも絡むところでしょうか。そうでもないかもしれない。

あとは……Web上で読めるミニマップに関する文章としては ミニマップを見つめるとき - AINAMOOR/GAMETEXT が好き。すでにこれがあるのであんまり普通のこと書いてもなと思ったりしたところがあります。

だいたいそんなところでしょうか。よろしくお願いいたします。