葬儀の日 - 松浦理英子

19歳でこんなの書かれたら,もうたまりませんな.
葬儀の日 (河出文庫―BUNGEI Collection)
さいしょの「葬儀の日」と,後のふたつ「乾く夏」および「肥満体恐怖症」はぜんぜんべつもの.
「葬儀の日」はなんだもう,密度が高すぎてクラクラする.情景描写というのがそぎ落とされ,こころがむき出しになっている.浅く浅く,致命傷にならないように何度も体の表面を切りつけられているような気分になる.
で,そういうヒリヒリした「葬儀の日」に対して,あとのふたつはもっと鈍い痛み.張り詰めまくっていた空気が「大吉」だとか「デブノーマル」だとかいう言葉で一気にずらされるその感覚.文学によってしか与えられないあの素晴らしき「不快感」を高めているという点ではこちらのほうが一枚上手なのかもしれない.

精神的に緊縛されたい人にはとてもお奨めな一冊です.