2024-01-01から1年間の記事一覧

セーブメカニクスの8分類

以下を読んでた。 Geerts, F.L. (2017). Saving the Game is Shaping the Game: Defining and Understanding the Save Mechanic [Master's Thesis, Utrecht University]. UU Theses Repository. https://studenttheses.uu.nl/handle/20.500.12932/26038 著者…

『絵画の哲学』、あるいは描写の哲学の門前

清塚『絵画の哲学:絵とは何か、絵を見る経験とは何なのか』読んだ。 絵画の哲学: 絵とは何か、絵を見る経験とは何なのか作者:清塚 邦彦勁草書房Amazon いわゆる「描写の哲学」における描写の本性、すなわち「絵や写真、動画などにおいて、なにかが描かれて…

Re: 奇想の在処――〈奇想〉とは何か? 試論

くじらいさんの以下の記事を読んで考えたことを書きます。 hanfpen.hatenablog.com いきなりですが、本記事では以下を前提とします。まあまあ強めの仮定ではあるけれど、いったん飲み込んでください。 フィクション作品を鑑賞しているとき、われわれはそこか…

セザンヌの犬 - 古谷利裕

『セザンヌの犬』についてなにか書いておきたいと思っていて、とはいえ(いつもどおり)どうもまとまらないので、とりとめなく置いておく。 セザンヌの犬 (いぬのせなか座叢書, 7)作者:古谷利裕いぬのせなか座Amazon (そのほかの認めかたもあろうが、すくな…

『環境を批評する』と『東京ヴァナキュラー』と、あと自分語り

直近では『逆コーラップス』をやっています1。……ということとはまったく関係がなく、今日は最近読んだ本の話をする。青田『環境を批評する』とサンド『東京ヴァナキュラー』について。 環境を批評する: 英米系環境美学の展開作者:青田麻未春風社Amazon 『環…

ビデオゲームのストーリーは非整合的なのか - 倉根啓

ずっとエルデンリングのDLCをやっていて、ようやく飽き、ほかのことをする気になってきました。ほかのことをするなかで、エルデンリングをやっていたせいで見逃していた『REPLAYING JAPAN』Vol.6の倉根「ビデオゲームのストーリーは非整合的なのか」がおもし…

第五の御使ラッパを吹きしに

そうだな、たしかにあいつは、おれと同じ褪せ人だった。エビが好きなやつに悪人はいねえ。おれはそう思ってる……思ってはいるが、やっぱりものごとには例外ってものがあるんだろうな。……いや……そうだな、悪いやつだというのも違うかもしれねえ。けどやっぱり…

留年百合小説アンソロジー:ダブリナーズ - ストレンジ・フィクションズ

告知だ! ストフィク増刊留年百合アンソロジーにお話を載せてもらいました。今週末(5月19日)に迫った文学フリマ東京38【き-55】またはBoothでの通販にて(といっても通販のほうは第一次予約分が完売しているのですが)。幌田先生による装画もいいし以下で…

Re: ゲームの「不便さが楽しい」を考える

以下の記事がおもしろかったので、乗っかって考えようとおもいました。「便利状態」との比較で「不便」が出てくるってアイデアはたしかにすぎるんだよな。 ゲームの「不便さが楽しい」を考える - ビデオゲームとイリンクスのほとり 読みましたか? 読んだね…

ゲームと「できること」の芸術 - C. Thi Nguyen

以前読んでおもしろかったグエンのべつの論文“Games and the Art of Agency”を読んだ1。Games: Agency as Artのもとになったもの。以下に内容をメモっておく(いつもどおり内容は保証しない)。 著者のグエンについては、たとえば下記で紹介されている。とい…

2024-04-01

『マンゴー通り、ときどきさよなら』を読んだ。きっかけはこちらで紹介されている(いつも本や漫画の紹介がおもしろそうなんだよな)のを見たからで、前半あたりは「ほーん、移民が集まる街のようすを活写したやつっスね。はいはい」みたいなナメた態度でい…

人類の会話のための哲学 - 朱喜哲

読んだ。 人類の会話のための哲学: ローティと21世紀のプラグマティズム (nyx叢書, 008)作者:朱 喜哲よはく舎Amazon 読んだ動機は以下のとおり。 『プラグマティズムの歩き方』『真理・政治・道徳』といったミサックの本を読んできて1それらにある程度馴染み…

「自然としてのゲーム」について

こないだのBG3感想日記に書いた「ソリッドで一見しては把握できないようなメカニクスが、実験と調査にたいしてたしかにこたえてくれる感覚」について、まとまらないながらもすこしだけ。 科学と工学 まず、これに類する感覚が述べられたブログの記事を読んだ…

『ユニコーンオーバーロード』と「デッキ構築」、あるいはメカニクスの抽象化について

以下の記事を読んで気になったことがあって、それについてちょっとだけ。 ユニコーンオーバーロードのバトルシステムが素晴らしかったのでそのヤバさを説く|だらねこ 同記事では『ユニコーンオーバーロード』について、アトラスの山本氏の発言を引きつつ「…

お前らの言うImmersionのニュアンスがわからない

自分のやっているビデオゲームの話を読みたくなって、ときにはRedditなどでおこなわれている雑談を眺めたりすることもあるのだけれど1、そのなかで、英語圏のゲーマーがimmersionとかimmersiveという語を使っているのをしばしば目にしてきた。「このゲームへ…

2024-03-04

「継続」の偉大さについて考えるわけですよ。「齢を重ねるごとに、なにかを続けていくことの困難さ、そしてそれに打ち克っての達成というものがつねにあることが身に沁みる」だなんてのは、なんのおもしろみもねえよく聞く話ではあるんですが、じっさいきっ…

2024-02-15

昨年末にバルダーズ・ゲート3の日本語版がリリースされ、それからずっと没頭してしまっていたため、とても世情にうとくなっています。さまざまなおもしろいものごとがうまれてはすぎゆく——しかもすばやく!——この浮世にて、2ヶ月弱ほどずっとBG3をやっている…