アカデミックな資源を活かしつつものを考えることについて

以下を読みつつ改めて感じた、「趣味として、アカデミックな資源、とくに論文としてものされたそれらをある程度活かしつつ(すくなくとも活かそうとしつつ)ものを考える」ことに際するさいきんの悩みについて書きます。 哲学の論文をタダで読もう:趣味とし…

セーブメカニクスの8分類

以下を読んでた。 Geerts, F.L. (2017). Saving the Game is Shaping the Game: Defining and Understanding the Save Mechanic [Master's Thesis, Utrecht University]. UU Theses Repository. https://studenttheses.uu.nl/handle/20.500.12932/26038 著者…

『絵画の哲学』、あるいは描写の哲学の門前

清塚『絵画の哲学:絵とは何か、絵を見る経験とは何なのか』読んだ。 絵画の哲学: 絵とは何か、絵を見る経験とは何なのか作者:清塚 邦彦勁草書房Amazon いわゆる「描写の哲学」における描写の本性、すなわち「絵や写真、動画などにおいて、なにかが描かれて…

Re: 奇想の在処――〈奇想〉とは何か? 試論

くじらいさんの以下の記事を読んで考えたことを書きます。 hanfpen.hatenablog.com いきなりですが、本記事では以下を前提とします。まあまあ強めの仮定ではあるけれど、いったん飲み込んでください。 フィクション作品を鑑賞しているとき、われわれはそこか…

セザンヌの犬 - 古谷利裕

『セザンヌの犬』についてなにか書いておきたいと思っていて、とはいえ(いつもどおり)どうもまとまらないので、とりとめなく置いておく。 セザンヌの犬 (いぬのせなか座叢書, 7)作者:古谷利裕いぬのせなか座Amazon (そのほかの認めかたもあろうが、すくな…

『環境を批評する』と『東京ヴァナキュラー』と、あと自分語り

直近では『逆コーラップス』をやっています1。……ということとはまったく関係がなく、今日は最近読んだ本の話をする。青田『環境を批評する』とサンド『東京ヴァナキュラー』について。 環境を批評する: 英米系環境美学の展開作者:青田麻未春風社Amazon 『環…

ビデオゲームのストーリーは非整合的なのか - 倉根啓

ずっとエルデンリングのDLCをやっていて、ようやく飽き、ほかのことをする気になってきました。ほかのことをするなかで、エルデンリングをやっていたせいで見逃していた『REPLAYING JAPAN』Vol.6の倉根「ビデオゲームのストーリーは非整合的なのか」がおもし…

第五の御使ラッパを吹きしに

そうだな、たしかにあいつは、おれと同じ褪せ人だった。エビが好きなやつに悪人はいねえ。おれはそう思ってる……思ってはいるが、やっぱりものごとには例外ってものがあるんだろうな。……いや……そうだな、悪いやつだというのも違うかもしれねえ。けどやっぱり…

留年百合小説アンソロジー:ダブリナーズ - ストレンジ・フィクションズ

告知だ! ストフィク増刊留年百合アンソロジーにお話を載せてもらいました。今週末(5月19日)に迫った文学フリマ東京38【き-55】またはBoothでの通販にて(といっても通販のほうは第一次予約分が完売しているのですが)。幌田先生による装画もいいし以下で…

Re: ゲームの「不便さが楽しい」を考える

以下の記事がおもしろかったので、乗っかって考えようとおもいました。「便利状態」との比較で「不便」が出てくるってアイデアはたしかにすぎるんだよな。 ゲームの「不便さが楽しい」を考える - ビデオゲームとイリンクスのほとり 読みましたか? 読んだね…

ゲームと「できること」の芸術 - C. Thi Nguyen

以前読んでおもしろかったグエンのべつの論文“Games and the Art of Agency”を読んだ1。Games: Agency as Artのもとになったもの。以下に内容をメモっておく(いつもどおり内容は保証しない)。 著者のグエンについては、たとえば下記で紹介されている。とい…

2024-04-01

『マンゴー通り、ときどきさよなら』を読んだ。きっかけはこちらで紹介されている(いつも本や漫画の紹介がおもしろそうなんだよな)のを見たからで、前半あたりは「ほーん、移民が集まる街のようすを活写したやつっスね。はいはい」みたいなナメた態度でい…

人類の会話のための哲学 - 朱喜哲

読んだ。 人類の会話のための哲学: ローティと21世紀のプラグマティズム (nyx叢書, 008)作者:朱 喜哲よはく舎Amazon 読んだ動機は以下のとおり。 『プラグマティズムの歩き方』『真理・政治・道徳』といったミサックの本を読んできて1それらにある程度馴染み…

「自然としてのゲーム」について

こないだのBG3感想日記に書いた「ソリッドで一見しては把握できないようなメカニクスが、実験と調査にたいしてたしかにこたえてくれる感覚」について、まとまらないながらもすこしだけ。 科学と工学 まず、これに類する感覚が述べられたブログの記事を読んだ…

『ユニコーンオーバーロード』と「デッキ構築」、あるいはメカニクスの抽象化について

以下の記事を読んで気になったことがあって、それについてちょっとだけ。 ユニコーンオーバーロードのバトルシステムが素晴らしかったのでそのヤバさを説く|だらねこ 同記事では『ユニコーンオーバーロード』について、アトラスの山本氏の発言を引きつつ「…

お前らの言うImmersionのニュアンスがわからない

自分のやっているビデオゲームの話を読みたくなって、ときにはRedditなどでおこなわれている雑談を眺めたりすることもあるのだけれど1、そのなかで、英語圏のゲーマーがimmersionとかimmersiveという語を使っているのをしばしば目にしてきた。「このゲームへ…

2024-03-04

「継続」の偉大さについて考えるわけですよ。「齢を重ねるごとに、なにかを続けていくことの困難さ、そしてそれに打ち克っての達成というものがつねにあることが身に沁みる」だなんてのは、なんのおもしろみもねえよく聞く話ではあるんですが、じっさいきっ…

2024-02-15

昨年末にバルダーズ・ゲート3の日本語版がリリースされ、それからずっと没頭してしまっていたため、とても世情にうとくなっています。さまざまなおもしろいものごとがうまれてはすぎゆく——しかもすばやく!——この浮世にて、2ヶ月弱ほどずっとBG3をやっている…

わたしたちが『ビデオゲームの美学』を読むこと

フィールド上で方向転換する。コンピューターが接続されているテレビ画面の左上四分の一に草原が映っている。画面の下半分はぼくら一同に関する情報で埋め尽くされている。ヒットポイント、アーマーポイント、スペルポイント、装備中の武器。画面の右上四分…

2023-12-14

いろいろあるのですが、呪術廻戦アニメ2期が毎回すごいと思ってニタニタしてたらほんとにずっとすごすぎてだんだん真顔になってきてることだけ書き残しておこうとおもいます

デジタルゲーム研究 - 吉田寛

デジタルゲーム研究作者:吉田寛東京大学出版会Amazon 本書の構成は下記のとおり。あとがきでも触れられているとおり、カテゴリに分けられつつ、それを超えて全体におおむねクロノロジカルに並べられた論文集。なお、第1章の初出は2008年である。 序——ゲーム…

2023-11-14

Cory Doctorow: Science Fiction is a Luddite Literature – Locus Online ドクトロウがこんなこと言っており、まあそらそうやろと思ってずっといろいろ考えてたのだけれど、いっこうにまとまらないのでいったんいろいろ挙げるにとどめる。 ピンチョンの"Is …

2023-09-06

ご無沙汰しております。アーマード・コア6のためしばらくインターネット活動が弱まりそうです。よろしくお願いいたします。

The Cosmic Wheel Sisterhood(または一人称の占いとしてのアドベンチャーゲーム)

store.steampowered.com ストーリーとしては、「とある理由から遠い小惑星に流刑された魔女が、禁忌とされる存在(ベヒモス)と契約を結び、オリジナルのタロットカードの作成、そして友人その他の魔女たちとの会話および彼女らを対象としたタロットによる占…

2023-08-28

がんに効くは本当? 治療・薬・食事法の誤情報 亡くなった患者が信じた“エビデンスが乏しい方法”とは - #がんの誤解 - NHK みんなでプラス こういうのを見かけるたびに思い出すことがあるなとおもい、それをブログにでも書くかってなってたんだけど、調べてみ…

2023-08-18

最近読んだ本とか、そのほかもろもろ。いくらかはローカルの日記から、いくらかはBlueskyの投稿から引っぱってきつつまとめる。 照井『コンピュータは数学者になれるのか?』読んだ。計算機科学っぽいもの——とくにプログラミング言語の基礎概念まわり——に興…

2023-08-09

昼飯をどうしようかなと思っていたところで、ゲリラ豪雨ではない、ざばざばいう、それでもどことなく慎みのあるにわか雨が降りはじめて、外に出るのも面倒なので昼休みのあいだに思い出話でも書くかなと思ったわけです。おそらくTwitterでも書いたことがある…

真理・政治・道徳 - シェリル・ミサック

ここでも何度か言及しているとおり、『プラグマティズムの歩き方』がおもしろかったのでこちらも読んだ。副題は「プラグマティズムと熟議」。 真理・政治・道徳―プラグマティズムと熟議―作者:C・ミサック名古屋大学出版会Amazon 「シュミット(に代表させた…

2023-07-26

ブログを書くだけだと検索に乗らないっていうのがそれなりに痛感されて、ちょっと前にTwitter1にいろいろ投稿したりしていた けれどもそこからTwitterに戻るということもなく、一方でBlueskyでぽつぽつ投稿するようになってしまった 最近ブログを書いていな…

「鏖戦」ひとり読書会にむけて(3のその2)

メタフィクション云々はまた後日! まとめは下記。今回は第3節の続き。 murashit.hateblo.jp 「阿頼厨は上部球体をかかげ、その表面に十字形に並ぶ五つの眼根【げんこん】で外界をさぐった」ではじめて阿頼厨の見た目が披露されるのだが、相変わらずよくわか…