2024-02-15

昨年末にバルダーズ・ゲート3の日本語版がリリースされ、それからずっと没頭してしまっていたため、とても世情にうとくなっています。さまざまなおもしろいものごとがうまれてはすぎゆく——しかもすばやく!——この浮世にて、2ヶ月弱ほどずっとBG3をやっている。数日前にようやく1周を終えた時点でSteamで表示されていたプレイ時間は160時間程度、それでももうすこしやりのこしたことがあるなといまも2周目をやっているさいちゅうです。せっかくなので思ったことをつらつら書いてみようとおもいます。きちんとまとめる気はありません。

そもそもなんではじめたかっていうと、開発元であるLarian Studiosの過去の作品であるDivinity: Original Sinというシリーズが好きだったから1。それこそ「自由度」の高い、なんでもできるゲームとして、やったことにこたえてくれるゲームとして。そしてもちろん、それに随伴するキャラビルドがおもしろいゲームとして。「こういうことをやれるんじゃないか」「そのためにこういうスキルの組み合わせをしてみよう」というのがやまほどあって、やまほど試せる。テレポーテーション最高!

一方で、こういういみでの「自由度」の背景に——それこそBG3がそうであるところのD&Dをふくめた——TRPGという文脈があること自体はなんとなく聞きかじったうえで、かといってTRPGそれ自体に触れようとか、D&Dの世界観につて知ろうとかそういったことはほとんどしていません。Obsidianによるシリーズ過去作もやっていない。あるいは、もっとゲーマーなひとにとってはこういったCRPGの文脈としてPathfinderやらWastelandやらなんやらかんやらいろいろあると思うんですが、自分はそれらにもほぼ触れていません2

そういう状態ではじめたものだから、実質的にはD:OSシリーズの後継作みたいな感じの受け取りかたをしたわけです。そして、D&D第5版のルールをベースにしているとか聞いてどんなもんかとおもってたけどふつうD:OSに似まくっとるやんけとなった。もちろん話は逆で、D:OSがTRPGの伝統(の一部)をくんでいるからそりゃそう、という話なわけですが。ストーリーなんて飾りですよ……とまでは突き放せないものの3、おなじように「これができるんじゃないか」「こういうビルドでこういう戦略や戦術がとれるんじゃないか」みたいなのを考えて、調べて(bg3.wikiで)、試して、ときには(しばしば)やり直して……というのがおもしろくてしかたがない。しかも実質無料でリスペックできるんだからな! ソリッドで一見しては把握できないようなメカニクスが、実験と調査にたいしてたしかにこたえてくれる感覚というか。

だから自分、ビルドを考えるのが好きなんですよね。昨年AC6ですべてを潰したのにもそういうところがあるし、過去にハマったゲームにもそういう要素があるものがわりと多い。これがOPやでみたいなのを考えたり見たりするのももちろんおもしろいんだけど、自分もふくめこういうビルド要素が好きな人っていうのはきっとそれだけじゃなく、自分の好きな戦い方だとかロールプレイの要素も捨てきれないところがあるんじゃないだろうか。趣味に振り切れるわけでもなく、メカニクスとフィクションの間でストレスを感じながら、もうちょっとゲーム的に強くしたい……けどロールプレイ的には微妙だし……ってジレンマが好き、みたいな。

こういうプレイスタイルの欠点は、ゲームにじかに接していない時間も余裕で潰せてしまうことなんですよね。あれをやってみようこれをやってみようと思いつく、仕様が実際にどうなっているかを調べる、それにしたがってビルドの計画を立てる……みたいなことを、ゲームに接していないときでもやれてしまう。余暇にやることがほとんどぜんぶそれに費やせてしまうし、費されてしまう。なんならじっさいにゲームやってるときだって、そのビルドを試したり、ちょっと装備を調整してみたりでストーリーがぜんぜん前に進まない4

そんなめちゃくちゃおもしろいゲームだった——というかいまも相変わらずおもしろくやってしまっているゲームである——わけなんですが、しかしあらためて考えてみると、こういう形で「TRPGっぽいことをやる」っていう方向性はもういいんじゃないか、ビデオゲームの進化の方向性として自分にとってはノーセンキューになってしまうんじゃないかっていう気もしてしまうんですよね。なんかこう、その方向ではほぼ臨界点といってよく、これ以上やるならそれこそ生成AIとかを使って世界からの反応を見せていく形になるんじゃないかと思っていて、そうなるとそれは、なんだろうな、ソリッドな(そして融通のきかない、あるいはバグのある)メカニクスからの反応を見る楽しみにはならないんじゃないかというか。どうなんでしょうね、BG3がたまたまD&D 5eっていうメカニクス面での参照点があるから余計に思ってしまうところもあるのかもしれない。もうちょっとできるけど、ここまでしかできないというところに留められている——アーケイントリックスターの魔道士の手はもっとやれるだろ!——ってのは、なんかこう、たしかに不満ではあるんだけど、それができるようになることがほんとうに望ましいのかどうか自信がなくなってるんですよ。

あるいはここにも、メカニクスとフィクションの間にある緊張関係をおもしろがるみたいな視点があるのかもしれない。フィクションとしてできるべきことがメカニクスとして物理的に制約されていることからしか得られない栄養ってのがあるんやねえ。

あるのかな。

このへん、TRPGをちゃんとやっている人の話を聞いてみたいところではある。そこのあなた、どうですかね……?


言ったとおりまとまらなくなってきたので、最後に各クラスの雑感を書きます。難易度は戦術家でした。全体的に、物理系のクラスは追加攻撃を得たらお役御免でマルチクラスしましょうね〜みたいになってる気がする。

  • バーバリアン
    • みんなやってる酒場流喧嘩殺法での投擲バーサーカーがあほみたいに強いんだけど、どうせTB使うならモンクのほうがいいんじゃないみたいな悲しみも背負ってると思う。でもやっぱ最序盤からずっと強いしそんなカーラックが好き
    • 激怒の持続で困ることはそんなにないとはいえ、ちょっと窮屈に感じてしまうところもあったり
    • むしろワイルドハートで変なビルドを考えるののほうが楽しいんじゃないだろうか。熊が雑につよいのは置いといて、いろいろ組み合わせ方を試行錯誤する甲斐がある
  • バード
    • (勇は置いといて、剣と知についてはどちらも)本作の仕様に愛されすぎてると思う。パーティに入れないことに勇気が必要になるレベル
    • 戦闘不向きで口八丁で解決するやつでやろ!つって1周目の主人公に適当に選んだのですが、便利すぎるしふつうに戦闘力もトップクラスなのでちょっとヒいた
    • あえて言えば装備習熟が貧弱とかCONセーヴに習熟がないくらいだが、ファイターを混ぜとけば解決するんだよな……
  • クレリック
    • 回復はどうとでもなるゲームとはいえ、支援の面ではいるといないとでだいぶ違う。サブクラスでどれかひとつと言われればやっぱ光だろうけど、なんだかんだでどれ選んでもふつうにいけるんじゃなかろうか
    • ボーナスアクションで範囲回復(というか装備パッシブでの回復に付帯する効果の発揮)ができるとか、フルキャスターかつ装備習熟が充実してるとか、聖域があるとか、光輝ダメージが優遇されがちとかいろいろ
  • ドルイド
    • TBとって月でずっと変身したままってのが無難だしまったく弱くはないんだけど、装備とのシナジーがあんまりない(ないことはない)からだんだん飽きてくるところはあるかもしれない。気軽に土管に入れるのはいい
    • 胞子はどうやって活かすかを考える甲斐があった(でも加速胞子撒き以外で強くしてやれんかった)。土地は……ほかのキャスターでよくない? とはいえ実はドルイドはサモナーとしても優秀だったりするのでやれなくはないか
    • WIS系のライバルであるクレリックが扱いやすいし多様性もあるのがちょっとかわいそう。こっちはCC寄りといういみでなくはないのだが
  • ファイター
    • 物理系でシングルクラスでシンプルにずっと強いバトルマスターはえらい。装備もいろいろ選べて案外楽しいと思う
    • GOOウォーロックの怪光線でクリティカル特化させたる!つってチャンピオンをとったりしたのもわりとおもしろかった
    • エルドリッチナイトは、すまん、あんま使ってません(投擲があるからふつうに強いんじゃないでしょうか)
  • モンク
    • みんなやってるTBとSTR強化エリクサーの開手門が強すぎる。自分のなかで、物理系ではこれがいちばん強いということになってる、なりました。機動力があるのがいいし、スタンさせほうだいだし!属性もドンだ。さらにはやけに専用装備が優遇されている気がするんですが……
    • 暗影はかっこいいんだけど思ったより窮屈な印象だった。もっと場を整えてやればよかったかもしれない。四大門はちょっと……といっても、上で挙げた強みは属性追加以外どれも他サブクラスで有効なので普通に強いのであった
  • パラディン
    • リスペックに制限がかかるということで1周目では避けていてあんまりよくわかってない。2周目はダークアージで開幕誓い破りしてやったぜ!
    • 序盤はとにかくリソースが厳しいみたいな印象があるんだけどこの先どうなるんだろうな。強いらしいのでつが……
  • レンジャー
    • 地味! 追跡者が強いのはわかるんだけど。特技4つとれてもよかったんじゃないかな……
    • ただ、本人が暗中にいるよりはカラスの相棒を使役したり特殊矢撒いたりで補助する役にするほうがおすすめかもしれない。それこそ暗影モンクやローグたちと組み合わせると楽しいとおもう
  • ローグ
    • シーフでボーナス2点や!とかアサシンでアンブッシュや!って感じでマルチクラス先って印象が否めない(物理系で唯一追加攻撃がもらえないのでたしかにそうなる)んだけど、シングルで育てたら育てたでわりとおもしろい
    • アーケイントリックスターはいいですよ。ぜんぜん強かないんだけど、不可視化してる魔道士の手をターン制限なしで連れて歩けるのはふつうに便利だし(罠を箱で塞いだり、急所攻撃のおともにしたり、ノーコストで消耗品投げさせたり……ってのを気兼ねなくできるのがいい)、いっそ奇襲魔法のあるレベル9まで上げよう(秘術の感覚スタックのことはみなかったふりをして)→だったら10で追加特技も→いや11で確かな技術もとろう……火力はスクロールで……いやそれは誰でもできるか……みたいな感じで沼にハマってほしい
  • ソーサラー
    • つよいキャスターを考えようと思うとぜったいにソーサラーが視野に入ってしまってこわい。攻撃回数を稼ぐのが正義なゲームなのでしかたがないわけですが……
    • ヘイスト二重化はちょっと試してやめた。どうしても集中切れに怯える気持ちが捨て切れなかった(たいていその前に倒せるのでたぶん気にしなくてもいいのだが)
    • 魔力点とスペルスロットの行き来が自由なので思ったより場持ちも悪くはない、気がする。とにかく強い
  • ウォーロック
    • すげー楽しいクラスだと思う。怪光線強化や悪魔の目のためにレベル2までで終わらせるのはもったいない。ロールプレイ的にもシングルがいい
    • とはいえそれ以上上げたところで(追加攻撃と重なるあれを除けば)ハダルくらいしかメリットないかもしれないのだが
    • それでもそれでも、これだけ搦手もできて近接もできてあまつさえ目からビームまで撃てるってのはやっぱ唯一無二だと思う。レベル12で特技以外がもらえるのもウォーロックだけだぜ。騙されたと思ってスロットが3つになる11まで上げてみてほしい
  • ウィザード
    • 代わりを作ろうとするとけっこう工夫が必要になってくるクレリックとは対照的に、便利とはいえパーティ編成で必須の位置にはいづらいみたいなのはありがちなのではなかろうか
    • ほかの人員にはQoLを上げるスペルをとる余裕がまったくねえ!みたいなときにはありがたいんだろうな
    • 防御術だけはほかのキャスターにはできないことができて良かった。ソーサラーみたいな天賦の才とかウォーロックみたいな契約とかじゃなく勉強して魔法使えるようになったんだぜというのも俺たちみたいなモヤシにはうれしいポイントだ

以上です。


  1. 細かいことをいえばD:OS2で物理/魔法防御が分かれていて、それを剥がさないと状態異常を与えられないってシステムはあんまりうまくいってないんじゃないかと思うんですが、それはそれ。
  2. やる余裕とか関係性のないTRPGはともかく、CRPGをあまりやってないことは端的にもったいないなと思うんですが、とはいえ「毎回このハマりかたをするおそれがあるのか……」と思うと軽々には踏み出せんのだよな。とはいえ、じゃあなんでD:OSだけやってるんだっけ……たしかmizchiさんがおもろいって言ってたのを見てとかだったような気がする。
  3. 実際舞台とされているフォーゴトン・レルムがどういう世界だとか、九層地獄だなんだみたいな別次元の設定だとかを調べて知っていくと、その異常な物量に押し潰されそうになりつつもたしかにおもろいなとは感じはする。
  4. なんで、160時間とか言ってるうちクエストを進めるなどしている時間はたぶん半分とかそれくらいだとおもう。