まだ生きてるのか.今年で100歳とは・・・すごいな.
・・・ともあれ前半(第1部〜第4部)だけ読んだ.随所随所にしびれる文章がちりばめられていて,ここまでくると逆に危ないんじゃないかと思ってしまうくらいだった.小説以外では「錯乱のニューヨーク」いらいじゃないだろうか,こんだけまっすぐに熱にあてられてしまったのは.
もちろん彼の言うことにすべては同意できるものではない*1けれど,それによって損なわれるものなんて,得られるものの豊饒さから言えば全く問題にならないくらいだ.
どこをとっても面白いのだから,その中からいくつかに絞って内容を列挙するなんてことはすごく困難なのだけれど.例えば・・・
人間が生きているその様子を見て触れ,そこから何かを引き出そうとすることについてのすばらしく刺激的な忠告や,新大陸と旧大陸との価値観の,あるいはアジアとヨーロッパとの人間のありようの,不可避な衝突,せめぎ合い,ジレンマについての物語.さらには大西洋での日没のあまりに詳細で詩的な描写,などなどなどなど.南アメリカの話をしていると思えばインドの話をしはじめたり,文明の始まりから彼の生きていた現代まで時間をやすやすと操ることさえしながら,レヴィ=ストロースは途切れることなく語りかけてくる.
ここに通底する,ある種の憂いのようなものは,本当に「美しい」し,それでいて異様なほどの饒舌さでもって僕の頭に働きかけやがる.
あらゆる部分からなるシステムのシステムが全体を照射する.これはそれ以外の方法では記述することのできない全体.あるいはこの方法は記述なんてものではなくて,結局のところ記述の方法なんてありはしないのだと言うこともできるのかもしれない.
彼の持つある種の思考パターンのようなものが透かして見えてきたような気がして,僕はさらに惹き込まれてしまう.