自転車で帰省した話(4日目)

10月19日夜。

例の会合に行くということでまずは無免許さんとこの事務所(カフェができそうなくらい綺麗だったというかここでカフェみたいなことするらしいという話を前日聞いていたがほんとにその通り快適だった)に集合し、すこしだけ紹介などされ、飲み会のお店に参ります。最近開店したらしい飲み屋さん、もちろん小さな街(失礼かしら)ですから参加者皆さんと知り合いどうしというか、そういうお店でした。「こうこうこういうことがあって飯田にやってきたんですよ」という説明をするわけですが、こと「インターネットで知り合った」という事実は若輩者の僕にはどうにも恥ずかしいことのように思えてしまうわけです。しかし無免許さんはまったく頓着なさらぬ(かっこいい)。そんなこんなで参加者のおじさまがた(僕を除いた平均年齢はたぶん僕の年齢よりも10以上上なんじゃないかっちゅう)も続々いらっしゃいまして、じゃあはじめましょうってな具合、アイツ誰だって思われてんじゃねえか俺という自意識過剰もそこそこに、じっさい飲んでみると案外ふつうに喋れるもので、というか蕎麦の使い方についての会合って聞いたけど話ほとんどしてなかったぞ!下ネタばかりだったからだ!だから馴染めたんだ!!(いや、嘘です、してました。蕎麦の話ももちろんしてました。僕が考えつくようなことはどうもまだまだ甘っちょろいなあと感じられた、つまり、実際にやってる人の話が聞けることはなんだかとても嬉しく面白かった)そんなこんなで一次会が終わり、二次会行くべえってことで二次会どこ行くのでしょう。「ムラシット君ももちろん行くよね」「は!はい!行かせてもらいます!!」→馴染みのスナックへ。

スナックでお姉さん(たいして年齢変わんないのになんでお姉さんて呼んじゃうんだ!俺様カマトトぶって、秋)たちに話すこともそんな変わんねえというか、「どこから来たんか聞いてみ?」「えー、どこから来たんですかー」「いや、それがね……」つまり自転車で東京から里帰りしようと思い立ちましてねそこでなんかついでに飯田来ねえって言われたからハイ行きます行きたいですつったら車出してもらって昨日来てそんでもって今日なんかこの飲み会に呼ばれちゃってタハハ飯田いいとこですねえ!「えー、ちょっと意味分かんない」「意味分かんないっすよね!俺も分かんないですし!たぶん誰も分かんない」とかなんとか。その他の話題:(1)飯田いいところですね第二の故郷です東京で挫折したらこっち来て住みます。(2)自転車しんどいっすよ正直もうかなり義務感っていうかアレですよしんどいだけですよ帰りたい、ああでもどちらに帰ればいいんだろう。(3)あー、同世代なんですね、同世代なんだ(敬語を使うべきかどうか迷う)、あーお笑い好きなんですか、そういえば僕も中学生のころ芸人になりたいと思ってましてね、思っててね。等々。そのうち店閉まるってんで近くにあるタイ料理屋さんに舞台を移し辛くて美味いが腹いっぱいで食えなかったトムヤムクンをそれでも食い、帰ったのは深夜1時過ぎ。


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10月20日。

さて、この日は名古屋まで行かねばならならず、前日にいろいろ調べた結果19号はクソ恐しいトラックがクソ恐しい普通車でさえ恐いのにあれを自転車で行くなぞ死にに行くようなものという話も聞きながら153号を進むのがいちばんマシということには(無免許さんや会合に来ていたおじさまがたとの話し合いの結果)決まっていたのだけれど、問題は飯田市市街を出ておおよそ30km地点にある治部坂峠。この帰省期間中たいへんお世話になった国道標高図のサイト*1で153号を見ればお分かりいただけます通り箱根峠と変わらない、いやむしろこちらのほうが厳しんでねえのってくらいの標高差。前日、無免許さんに峠のてっぺんまでは送ってくださいとこの期に及んであつかまし過ぎるお願いをして、さて当日の朝10時。駅前で待ち合わせ、大阪からやってきた姉ちゃんのやってる五平餅屋さんで五平餅を買っていただくなどしつつ一昨日の晩にお世話になったのと同じバンで峠を上る。「なんか牧場やってる人に知り合いがいてさ、結婚式でね、そこで馬を借りて乗ったんだよ」「マジすか」「テンガロンハットかぶってさ」「かっこよすぎる」とか「ここ(治部坂峠スキー場)の食堂のラーメンが飯田市でいちばん美味いラーメンで」「遠い!」とかそういう話をしながら峠の向こうまで送っていただく。ここでお別れ。無免許さんほんとうにいろいろお世話になりました。飯田たいへん楽しゅうございました。「いやー楽しかったぜったいまた飯田来ますよ」「蕎麦の種蒔きのときには来なよ、人数に入れとくから」「えっ」。ともかく、ほんとうにありがとうございました。労働力を提供しますから19日の晩にどんな話をしていたかについては黙っていてください!!


というわけで11時半くらいだったか治部坂峠(道中の最高地点)を越えちゃったんならもうずっと下りだから楽勝だぜ今日は名古屋までとかチョロいもんだぜと思っていたのだけれど、いや、いやいや、そうそううまい話はないもので。すぐ先にある赤坂峠をスタートダッシュで越えてからしばらく、急峻な坂道を下っているあいだは良かったのだけど、そこから下りも落ち着いてもういくつか小さな峠がある、そこが鬼門だった。峠じたいはそこまでひどいってものでもない、200m強を上るだけのもののはずなのになにが厳しかったかといえば、愛知県に入ったくらいから右膝の関節が痛みはじめたこと。実は前日から違和感があったのだけどたいしたことないだろうと放っていた右膝の痛みがこの有様。けっきょくこの右膝の痛みには最後まで悩まされることになるのだけれど、ともかく、山道、側道もなんもない、草が横から伸びほうだいの道を「膝痛い」「なにこれ、膝痛いんだけどこれなんなの、俺なにか悪いことした?」「膝が完璧ならこんな峠……」などとぼやきながらけっきょく最後の峠を越したのは14時もとうに過ぎたころだったはず。


そこからはわりかし快調、香嵐渓を過ぎたあたりの下りも楽しめるくらいに快調。で、その先どう進むかってえと、猿投グリーンロードという自動車専用道路の脇に歩行者/自転車道が整備されているという話を聞いたのでそれまでずっと通っていた153号を離れてそちらを通ってみることに。この時点でもはや名古屋まで40kmを切っており、膝は痛かったけれどどうにかなりそうだ自転車道とかありがたいなあと楽観していた。そしてこういう楽観はたやすくブチ壊される。実質3日目で既に何度もそういう落胆に襲われてるのにいい加減反省しろよという話はごもっともですが、それでも楽観しないとやってられないんだよ!!

で、今回の落胆は何かって猿投グリーンロード。12kmほどあるけど、自転車道だし快調に行っちゃってもしかして30分くらいで行けちゃうんじゃねえのという楽観が落胆に。なんでってな、ごっつい上るねんこれ。12kmのうち10kmくらいは上りだった。聞いてないよ……サイクリングロードってさ……ポケモンでさ……軽快な音楽がかかってさ……セキチクシティまで一直線のあれだよね……。実際にはその逆、タマムシシティへ向かう、あの自転車でも歩くスピードしか出ないアレであって、従って膝の痛みが再びダイレクトに響く。期待が大きかっただけに呪いの言葉が口をついて出る。

そうやってどうにかこうにかグリーンロードから出るとそこは万博記念公園。日本初のリニアモーターカーの実用路線だけどいまいち経営がうまくいってないことで有名なリニモを横目にしながら走る。すでに17時前。すこしずつ、すこしずつ暗くなってきた。コメダ珈琲があった。入る。これからしばらくは何度も目にするコメダ珈琲だがこのときはなんだか珍しくてつい休憩にと入ってしまった。シロノワールは頼まなかった。携帯でtwitterを見ているとハックルさんの話題がちらほら見られたのでどうしたんだろうと思って見てみると大変なことになってると興奮しながらも、外が本格的に暗くなってきたのに気づいて焦って店を出る。17時半。

このあたりからは夜道ではあったけれど、さすがに名古屋も近づいてきたとみえて街灯が明るい、調子づいてきたのか膝の痛みもずいぶんマシになってきたように感じられて、ちゃきちゃき進むことができたと思う。名古屋駅のあたりに着いたのは19時くらい。膝の痛みにほとほと懲りたがこれはおそらく次の日からも付き合っていかねばならないのだろうなと近くにあったドラッグストアでサポーターを購入したり、定食屋でビールを飲んだり、名古屋在住の方と茶をしばいたりして(お忙しいところありがとうございました!)その日はおしまい。94km。


さて次の日はどうしようかと思っているとどうやら午後から雨との予報。当初の予定通り京都に向かうとすればちょうど鈴鹿峠越えの頃に雨に遭ってしまう、これは困った、どうしたものかと考えた末に辿りついた結論が「伊勢に寄ろう!!!」。よく考えてみれば伊勢に寄るからって雨を避けられるわけでもないんだけれども、それほど遠くないし雨のなか峠を越えるよりはマシだろう、明後日も明々後日も降るとかいうんだったらどうせ進めないわけだし*2、そういや一生に一度の伊勢参りも果たしたことがないし、ついでだし、ということで「伊勢に寄ろう!!!」。

次回、知多半島を下りフェリーに乗り雨に降られて伊勢へ参る。

*1:http://www.hyokozu.jp/

*2:どうせ暇なんだしもしどこかで雨が降るようなら無理せず休もうという計画はあった