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あまりに退屈な

季節が季節をこえてゆくとは、いったいぜんたい、どういうことだね。
僕は季節に即したものしか想像することができませんから、想像の範疇をこえてゆくには、季節そのものが季節をこえてゆくさまを、想像なんていう不確かなものなしに、むりやりに言葉で遊んで、現れ出でるのを待つしかないということなのです。そこからようやく現実の皮を一枚いちまい剥いでゆくんですよ。とっかかりには爪を立てるしかない、それはあまりスマートとはいえないやり方だけれど、ともあれ最初の手がかりは必要なんです。
するといま、ここはどんな季節なのかね。
そうですね、いま僕たちがいるこの場所は、未だ季節がありこの場所が彼のそれと似たような構造を持つ空間のなかに確固たる位置を占めているという、後に崩される前提のもとで言うのならば、まずはそれを、からりとした、日射しの強い夏の昼下がりということにしておきましょう。
わかった、そう言われるとなんだかそんな気がしてきた。暑いね。
そうでしょう。
助かったよ、私は蒸し暑いのは苦手でね。先日ある東南アジアの国へ旅行に行って、私はその国をたいそう気に入りはしたのだけれど、たったひとつ文句をつけるところがあるとすれば、その蒸し暑さだったものでね。私たちがいま座って話をしているこの国だって似たようなものなのだけれど。
あっ、そこまで規定してしまうんですね。正直なことを言えば、僕に主導権を握らせてくれるのかと思っていたのですが。これでずいぶんと制約を受けることになってしまったじゃありませんか。
そうかい?しかし、あとでいくらでもひっくり返せると言ったのは君じゃないか。
まあ、できなくはない、という程度のものですから。とはいえいちど規定してしまったものは仕方ありません。それにいまは立ち上げの段階ですから、彼としても文句を言う筋合いはないでしょう。
それなら良いのだけれど。私としても彼からひどい扱いを受けたいと思っているわけじゃないしね。
そのあたりは分かってくれているとは思うのですけどね。いかな僕たちが分身に過ぎず、そこに他者が現れていない、これから先も現れるかどうかは怪しいとはいえ、彼の未熟さは、冒頭からのネタばらしだけで十分というものです。