今日も宣伝です。宣伝エントリしか書かなくなったブログはもう先が長くないという話があります。つまりここがブログであったならば先は長くない。しかしここはブログではなくあくまで日記なのだ。だから先は長い。安心ですね……ということで心置きなく宣伝をはじめます。タイトルの通り、12月5日に京急蒲田駅からほど近い大田区産業プラザPiOで開催される文学フリマについてです。
文学フリマに行く人へ
おお!あなたは文学フリマに行かれるのですね。奇遇ですね。僕も行くんですよ。そして僕の寄稿させていただいた同人誌がいくつか出展されたりもしちゃうんですよ。そんなわけで以下の3サークルにひとつずつ小説の載せていただいております。
R-07: PLAYBOX PROJECT "HARVEST vol. 1"
『次の朝を待つまでの間、寝心地の悪いベッドの上で脚を何度も動かしながら有り得たはずの思い出を遡る彼は、さほど大きくもない家の天井から星雲に見透かされ、そこに記憶を送ろうとする行者にも見える。死を目前に控えた彼は、ふたたび夢を見る』
こないだ感想書いたアレです。すでに電子書籍として購入できるのですが、今回の文フリでは紙バージョンが手に入ります。内容に関してはこないだの僕の日記あるいはこちら(http://p.booklog.jp/book/14059)の解説をご覧ください。僕は「蜘蛛の巣、千の扉、ユニタリ変換」というお話を書いています。タイトルの由来はもう忘れてしまいました。往復のひとつひとつに意味をこめたつもりでしたが読み返してみると書いた本人にしか解らないという代物になってしまってます。いや、いいんだ!僕のはどうでもいい!
真新しいかといえばそうではないかもしれない、だけれど、だからこそ、内部から突破していこうとするエネルギーに満ちた本になっているのではないでしょうか。
公式はこちら。id:natsume_yohさんのサークルと合同ブースらしいぜ。
http://d.hatena.ne.jp/inhero/20101205/1291089905
B-17 Donuthole.org "Littera"
『べつに期待しなければ裏切られることもない、せいぜいあわよくばといったところで、そんなものは期待でもなんでもない。だからおれは仕方がないといったふうを装って承諾することにした。べつに招いているわけでもないこと、しかしおれの心は広いということ、それらを同時に伝えるよう最善の努力を尽くしたつもりだ。おれはこのような人間関係への配慮を日々怠らぬよう気を遣ってばかりいる』
いつもお世話になっているtwitter-erであるところの暁さん(@aquirax_k)が合同誌を作るということで声をかけていただきました。官能小説を書こうとしてどうにもならなかった代物です。暁さんのコメントによれば「非常にコメントし辛いな…。なんだろう120%の力でヨガをしてるというか、なんというか」「(中原昌也の)ドキュメント授乳を思い出しました」「ああいう内容にも関わらずラストセンテンスが感動的であるってとこが一番素晴らしいですよ。『これって中原昌也じゃないですか』ってそれだけで収めたくないですけどね」。いや、いいんだ!僕のはどうでもいい!
5人の小説と5人のエッセイ、こういう形式いいですよね。僕の小説が浮いてるとか言われると僕は泣きますが、なんていうか、僕の好きなブログってのはこういう文章が書かれてるブログなんじゃないかと思うのです。生きるにあたってくだくだしく考える、妄想でもなんでも、せずにはいられない、それが言葉になってる、すげえ!それっていいじゃないすか!
公式はこちら。ふねくん(@_fune)のブースに委託という形になっているみたいです。小説の冒頭部分がちょっと読めたり挿絵が見られたりしますよ。
http://donuthole.org/aquirax_k/
I-07: 文芸同人 UMA-SHIKA "UMA-SHIKA Vol.4"
『ここは僕の故郷の街の博物館、目の前には大きな立方体が偉そうに佇立している。この真っ黒な箱、大きさは三メートル四方といったところだろうか。あまりに黒く、表面に陰影さえ確認できない。空間にぽっかりと空いた穴のように見え、一目では立方体かどうかも判断し難い。上下左右から眺めてみて、ははあこれはどうやら立方体なのだと判らなくもないという程度である』
今回もあのUMA-SHIKAが相変わらずの豪華メンバーでやってくる……。上に引用したのは前半部分の冒頭(つまり書き出し)なのですが、後半はなぜか対話篇になっています。前半後半ともに別の意味での馬鹿っぽさを僕なりに出してみたらただの馬鹿になったという代物です。いや、いいんだ!僕のはどうでもいい!
もう2010年も暮れるのだから、20世紀の想像力なんてそろそろ脱して、21世紀の想像力というものをインターネットから打ち出していったろうじゃないかという奇想天外の小説群。今回はついに200ページ超え。エッセイだって、おじいさんの話だってあるんだぞ。そして今回特に目を惹くのは往復書簡か。本読むのが好きな人ならうわーこれ参加したかったと思うに違いないっていうか俺は思った。
公式はこちら。主催の紺野さんによる全編レビューがあってすばらしいです。俺のは青春文学だったのか。
http://d.hatena.ne.jp/uma_shika/
というふうに三つ寄稿したわけですが、落ち着いて自分のを読み返してみると(自分のを読んで落ち着けるわけがない)まったく同じことについて違う書きかたをしてるだけだなーって感じなので物好きな方は三つとも買って読んでいただければ「うわ!同じことについて書いてる!!」と驚愕していただけるのではないでしょうか。ほんと、夢も思い出も小説もインターネットも宇宙も同じものだっつう、っていうか前回の文フリに寄稿したのもそうだった気がするので僕はもうダメじゃなかろうか。
文学フリマに行けない人も行ける人も
UMA-SHIKAは毎回残ったものを通販していますし、HARVESTはそもそも電子書籍、Litteraも残部しだいでは通販ありってことなんですが、ここで俺が言いたいのはそういうことじゃない!!
だいたいだな、おい、さっきから急に一人称が俺になって口調が偉そうになってるんだが、こういう催しが東京近辺で行われるという特権性について、12月5日に楽勝で蒲田まで来られる奴はちょっと考えたほうがいい。俺が、俺が地方に住んでいるときにどんな思いをしたのか分かってんのか、そして現在進行で思ってる奴だってたくさんいるんだってことを分かってんのかこの野郎。ってことで、なんで本で出すのか?なんでこんなイベントに参加するのか、ってことをだな、この野郎このやろう!!
……興奮してしまいました。なんで紙の本で出さなきゃいけないんだろうって思うんですよ毎回。ブログでやれ。あるいはパブーでええんちゃうのん(HARVESTはそうしてた)、キャッキャウフフしたいだけか!そうなのか!そうなんだろう!クソ!クソったれ!!
……また興奮してしまいました。たしかにWebじゃあ組版が思うとおりにでけんという話もある。紙の本を出すなんぞという気違いじみた気概がある人だけが出展するんだから必然的に気合いの入ったものが読めるんじゃねえかって話もある。同人みんなで作る楽しみもある。〆切が必要だぜ俺はっていう奴がいるのもわかる(僕のことです)。でも「読まれる可能性」ってのは、Webのほうがよっぽど広いんじゃないか、その可能性こそが書き手が求めているものなんじゃないか、低い低い可能性だけれども、それによって救われる人がいるかもしれないってことこそが真の願いなんじゃないか。他のすべての人間にとってクソであろうとも、そういう文章と人との出会いの可能性に賭けるならWebじゃないのか、っていう気持ちがある。
まあ、だからって文フリになんて出すななんて思うわけもありません。ただ、ただ、だ。せっかく来られるのなら、そうだよ、文フリに来られるってのは、ある意味非常に「選ばれた人たち」なんだよ、だから、せっかく当日来られるのなら、ただの大規模オフで終わらせるのは勿体ないんじゃないかと、これは当日来られる人に対して僕は言う。べつに出されてるもん全部買えなんて言わない。あたりまえだ。僕は全部だって欲しいけど、そんなもん金もないし読む時間もねえよ。だから全部買えなんて言わない。でも、わざわざ文フリにまで来といて、知り合いの本だけ買って知り合いと話しちょっと交友を広げるだけとかおめえなんのためにやってんだこの野郎と、僕はそう思うわけで、つまり、当日来られるあなた、そう、あなただ。あなたは、せっかくだからブースをいろいろ回ってみてですね、知らない人の本に手を出してみちゃったりなんかしてですね、あなたのハートになにかしこりを残すような文章に出会ってですね、そういうものをたった一つでいいから見つけて帰ってはくれまいか。主催者でもなんでもねえし、自分自身の本を出すわけでもねえ自分が言うのもおかしな話なんですが、僕はけっこう心の底から、そう思う。そう思うよ。それが当日来たくても来られない人に対するせめてもの礼儀なんじゃないか。いやそれは言いすぎた。言いすぎたけれども!なんだっけ、今この文章を打ってるキーボードの音がほとんど地獄のミサワなわけですが、そんなことはどうでもよかった、えーと、なんだっけ。
なんかこう、面白いものがあったりしたら、家に帰って、読んで、インターネットで紹介なんてしてみたり、そこまでしなくとも、その人のtwitterなりブログなり個人サイトなりなんなりを見てみるなり(キテレツー)、してみれば、面白いものが見られるだろうし、長い目で見れば、当日来られなかった人も含めてみんなが、もちろん誰よりも僕が、面白いものをもっと読めるようになる端緒になるんでないかと、情けは人のためならず、面白いものは人のためならずではないかと、僕はそう思って、筆を措かせていただきます。