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日常

今日は花を売ることについて書きます。僕は現在アルバイトをしていて、それが花屋なんだという話です。僕の肩書は未だにいちおう大学院生と言ってよいのですが、まったく学校へは行っておらず、卒業なんてものはとっくのとうに諦めています。就職活動(アゲイン、なんたってこの春やっていたのですから)なんて言葉が脳裏を掠めるのですが、そんなものは来春にやっておけばよろしい。だからといって何もせずにいるわけにもいかないというか、いや、勉強などやらねばならないことも多々あるのですけれど(やってはおるのですけれど)、やはりお金も必要、というわけでここ数ヶ月は花を売って食って寝る(インターネットもする)生活をしているというわけです。

花屋といってみなさんが思い浮かべるのはどんな光景でしょうか。僕がやっているのはその想像をあと三段階くらい泥くさくしたものだと思っていただきたい。花束を作るなんてことは新米の僕にはできませんし、そのために雇われたなんてことがあるはずがない、つまり僕は、おもに力仕事とレジ打ちのために雇われてるのです。ですから、初期状態において植物にたいする僕の知識はほとんどゼロでした。とはいえ、分からなかったらお店の人(僕だってお店の人なんだけど)に訊けばいいだけの話ですから、それほど問題はなかった。駅やデパートでしばしば見かけるような主に切り花を扱う店ではなく、鉢植えなども主力としてやっているお店ですから、重い鉢を移動させたり、花の苗がたくさん入ったケースを運んだり、枯れた花を摘んだり、ゴミを集めてビルの裏のゴミ捨て場に持って行ったり、切り花を入れておくためのバケツ(のような容器)を洗ったり、お客さんの相手をしたり、そういうことが、僕の仕事です。

基本的には正午から晩まで、ずっと外でつっ立って「いらっしゃいませー」「630円になりますー」「1000円お預りしますー」などと声をあげています。雨の日は休みになります。店の前に花の苗やら鉢植えやらを並べることもないため、僕の仕事だってほとんどないというわけです。同年代の人が働いているわけでもなく、僕はこの夏から働きはじめたばかりですから、普通に下っぱなわけです。「あれやってー」「はーい」。そんな感じです。「あー、この時期はやっぱ、ビオラとかが楽ですよー」って、そうそう、お客さんは大抵おばさん、あるいはおばあさん、たまにおじいさんもいる、そんな感じです。駅近くの広場みたいなところに面しているため、いろんな人が通ります。高校生もたくさんいますが、彼ら/彼女らが花を買いに来ることはほんとうに稀です。ヤンキーもいる。会社帰りのおっさんも通るし、親子連れもいる。いつも同じ光景を見つめては、ああみんな生活してるんだな、などと、ボンクラに相応しい感想を持ったりします。この花屋で働いている人たちはみんな、近くのパン屋さんや、和菓子屋さん、ビルの管理をしてるおじさんたちとは仲がいいようですが(そりゃあそうでしょう)、僕は新入りですから挨拶程度の関係です。さすがに顔は覚えました。いつも行くマクドナルドもそこにあって、だから最近ちょっと行きにくいのですけれど!

そのなかで、客として来るおばさんの相手をするのは嫌いじゃありません。大抵は朗らかか人なので普通にお花の話をしたりします。訊かれていちばん困るのは「この組み合わせどう思う?」です。あんたのベランダに置く寄せ植えなんだからあんたが好きな組み合わせで植えればええやんってな話です。もちろん「いいですね!それ僕はすごく好きです」などと答えます。背中をそっと押してあげるのが僕の役割なのです。ともあれ、レジ打ちを日に1回くらい間違えそうになることを除けば(バーコードがあるわけじゃなし、値段を覚えておかねばならんのです)、お客さんの相手をするのは嫌いではないんです。丁寧に言っとけばわりとファジーな対応をしても問題ないところがありがたいんです。

もちろんそのような場所、老若男女が生活のために(目の前のビルにはゲーセンや居酒屋もあるから、遊ぶためにだって)集まる場所にありますから、変な人も多い。昼間っから酔っぱらった酒くせえおっさんに絡まれることもありますし、変質者もいます(なんというか、変質者の方はほんとうに「変質者」なのです)。とはいえ、それほど問題になることもありませんので、とくに気にすることもありません。日常に生きる変な人です。お客さんとして来られるとちょっと面倒ですが、そのへんの対応は僕の直属の上司(って言い方ぜんぜんしっくり来ないしちょっと違う気がする)であるガタイのいいおじさんがとても上手い。僕もおじさんに学ぶところがとても多いです。おじさんはちょっとパートのおばさんとの仲が悪いようですが、そのことを除けばとてもいい人です(お子さんは今年から小学生だそうです)。っていうか、お店の人はみなさんとてもいい人でして、ありがたいことだと思いながら日々働いております。職場の人間関係というのはとても重要です。

大きな資本の下にいない人たちを実感することとか、最近になってようやくお客さんに花の育て方についてまともにアドバイスできるようになってきたこととか、3時になったらおやつとコーヒーが出ることとか、話したいことはまだいろいろあるのですが、まあいいです。今日も、バイトが終わり、牛丼屋で飯を食いマクドナルドでコーヒーを飲みながら2時間ほど読書をして(あっ、これは大きな資本ですね!)、帰ってきました。だいたいそんな生活です。僕はこれでいいのでしょうか。良くないこともありますが、まあいいのです。いつもどおり、良いことも悪いこともあるってだけの話なのでしょう。