2023-01-31

前回の試みは失敗だったなと思う。線的に思い出していったって、なんだか薄い記憶しか甦ってこないものなのかもしれない。自分にとっての街の記憶というものがそのようなものだからなのか、たんに昔のことすぎて忘れてしまったからなのか。 ほかにも書きたい…

2023-01-20、あるいは記憶のなかの京都

住んでいたのは15年ほど前なわけで、いくら古都とはいったって、現代日本における変化の速度の及ばぬわけもなく、ずいぶんと様変わりしているにちがいない。それに加えて「記憶のなか」だ。いろいろに改変されて事実と異なっているのも当然だろう。ジョイス…

2023-01-19、あるいは「弱者のインターネット」について

「ムラシットくん、インターネットの話しか書いてなくない?」 「しゃあないやないですか。仕事の話をするのも家庭の話をするのもはばかられるし。いつもどおりコンテンツの感想か勉強の記録もありなんだろうけど、それらも最近の自分が低調ぎみだし。でもな…

2023-01-10

先日の日記を書いてからこのかた、自由な時間はおおむね、年末年始にRSSリーダーにたまっていたフィードの消化に充てていた。数百とあった記事を、いくらかはざっと眺めて終えたり(せっかく書いてくれたのにごめんね)、あるいは「あとで読む」的なリストに…

2023-01-04

考えるところがあったというほどでもないのですが(かといってまったくないということもないのですが)、昨年の暮れにスマートフォンからTwitterクライアントを消してみたところとくに問題なくやれているので、とりあえずそんな感じになっています。タクティ…

すずめの戸締まり

ねじれ双角錐群アドベントカレンダー8日目の記事です。ね群といえば、先日の文フリで頒布したね群の最新刊『故障かなと思ったら』もBoothにて通販中。アドカレともどもよろしくね! というわけで、今日は『すずめの戸締まり』についてのメモを載せることにし…

文学フリマのSF島その他の告知

『The Poetics of Science Fiction』を読むプロジェクトはタクティクスオウガのリメイクが出たことで完全に停止していますが、それはともかくとして告知になります。 11月20日開催の文学フリマ東京35にて、例年どおり ねじれ双角錐群 の同人誌が出ます。例年…

『The Poetics of Science Fiction』第3章のメモ

2週間で1章くらいのペースで……とか言ってたんだけど、この章はかなりおもしろくて深みにハマってしまった。もうちょっとペース落としたいです。 承前: murashit.hateblo.jp 第3章のざっくりまとめ: 本章の目的 SFにおける「言語学」「言語」への意識や実際…

『The Poetics of Science Fiction』前置き+第2章のメモ

書名はいわば『SFの詩学』ということで、「認知詩学の観点からSFについて分析していきましょうね」という本書について、今後しばらくメモを書き連ねていきたいと考えています。 そもそも「SFの認知詩学:ピーター・ストックウェル『SFの詩学』The poetics of…

Disco Elysium: The Final Cut(またはロールプレイの諸相)

権威: 5 非常に高い 97% +1 キムに信頼されている。 +2 キムに完全に信頼されている。 これはレッド・スキルチェックだ。再挑戦はできない。 store.steampowered.com 「ロールプレイ」についてどうしても考えてしまうビデオゲームであったため、それについて…

Interior Chinatown - Charles Yu

きっかけは、千葉集さんが最近やっている短編まとめです。 Charles Yu, "Problems for Self Study"(2002) - 短篇企鵝 このProblems for Self Studyを読んで、おもろいやんけと思ったんですよね。たんに形式だけみれば(少なくとも今となっては)そこまで新…

「新しい世界」のまわりをぐるぐるする

なんとなく気後れしていたのですが、いやでも、ブログなんて好きに書けってことで、表題の件について思い付くことを書き散らしておきます。日記ですね。 というわけで、以前『紙魚はまだ死なない』に寄稿した「点対」を、伴名練編『新しい世界を生きるための…

『フィクションとは何か』- ケンダル・ウォルトン(中間まとめ)

第2部までをまとめてみよう、というエントリ。前半だけでも二段組300ページあってそれなりに分厚いのは、ウォルトンの理論自体が思ったより複雑なのもあるが、それよりもとにかく例示が豊富なことが原因のように思いました。それらを読むのはとても楽しいも…

『フィクションとは何か』第7章のメモ

第7章 心理的な参加 承前: murashit.hateblo.jp 第5章で触れたフィクションのパラドックスを端緒に、ごっこ遊びへの参加者が演じる心理的な役割について見ていく。 実質的な本論となる第1部〜第2部の最後の章であることもあるのか、「これまでの話からこん…

『フィクションとは何か』第6章のメモ

第6章 参加すること 承前: murashit.hateblo.jp ごっこ遊び(的なゲーム)において、われわれはどのように参加しているだろうか、という話。さまざまな制約の話と、あとメタフィクションの説明あたりが読みどころだと思う。 子どもたちの遊びへの参加 まず…

『フィクションとは何か』第5章のメモ

第5章 謎と問題点 承前: murashit.hateblo.jp ここから第2部。「虚構世界(の登場人物)」と「現実世界(の鑑賞者)」の間でどのような関係が成り立っているのかについて、ひいては、鑑賞上の基本的な姿勢について考察する。これが次章以降で考察・解決して…

『フィクションとは何か』第4章のメモ

第4章 生成の機構 承前: murashit.hateblo.jp 例が豊富でおもしろいんだけど、というか豊富だからこそ、結論としては「一筋縄ではいかんよね」くらいのことしか言ってない章とも言える。 生成の原理 小道具とともに虚構的真理を生み出す生成の原理について…

『フィクションとは何か』第3章のメモ

第3章 表象の対象 承前: murashit.hateblo.jp ※今回も実際の節構成とは異なるまとめ方をしていることに注意(なので、節見出しも同じではない)。流れとしては同じ。また、本章はこれまでに増してまとめ方に自信がないです……。 表象の対象 第1章で出てきた…

『フィクションとは何か』第2章のメモ

第2章 フィクションとノンフィクション 承前: murashit.hateblo.jp ※今回も実際の節構成とは異なるまとめ方をしていることに注意(なので、節見出しも同じではない)。流れとしては同じ。 2022/05/02追記:本章の内容については、清塚『フィクションの哲学…

『フィクションとは何か』序章および第1章のメモ

いつもは読書メモをとっても外には出さないんですが、ずっと出さないでいるとおかしな誤解をしていても誰にも指摘されないままずんずん進んでいってしまいそうだし、今回はせっかく丁寧に読んでいるということで、ひとまず出すだけ出してみる形で(今後もこ…

SS将校のアームチェア - ダニエル・リー

このブログは、自分がなにか本を読んでおもしろいなと思ったとき、なぜおもしろかったかについて考えるブログです。で、今回はこれ。 以下はみすず書房のサイトより。 古いアームチェアを修理に出したところ、中から書類の束が見つかった。鉤十字の印があり…

Inscryption

君も、私と同じぐらい戦いを楽しむことになるだろう。 store.steampowered.com へえええぇぇぇぇぇ……。あんた、Inscryptionをやったんだ。やったんだね。いいよいいよ、言わなくてもわかってる。 でも、どうしてだい? べつにそんなもの、しなくったってよか…

EUREKA

こんなふうに言い訳から入るのはまったく褒められたものではありませんが、やっぱり一見したくらいで飲み込むのは困難で、実のあることを書ける気がしない、けれど現時点でどう感じたのかをなんらか書いておきたく思ったので、そうさせてください。書くので…

『文体の舵をとれ』練習問題(7)「視点(POV)」問一

400〜700文字の短い語りになりそうな状況を思い描くこと。なんでも好きなものでいいが、〈複数の人間が何かをしている〉ことが必要だ(複数というのは三人以上であり、四人以上だと便利である)。 出来事は必ずしも大事でなくてよい(別にそうしても構わない…

『文体の舵をとれ』練習問題(6)「老女」

今回は全体で一ページほどの長さにすること。短めにして、やりすぎないように。というのも、同じ物語を二回書いてもらう予定だからだ。 テーマはこちら。ひとりの老女がせわしなく何かをしている──食器洗い、庭仕事・畑仕事、数学の博士論文の校正など、何で…

最近なんか書くときに断続的に考えていること

ね群の新刊告知と遅ればせながらの夜ふかし百合参加報告をしたいなと思って、その前置きをと考えはじめたところで、「これ、まとめるのにたぶんめちゃくちゃ時間がかかる(あるいは無理)」と思ったので、いったん雑な箇条書きのまま残しておこうと思いまし…

『文体の舵をとれ』練習問題(5)「簡潔性」

一段落から一ページ(四〇〇〜七〇〇文字)で、形容詞も副詞も使わずに、何かを描写する語りの文章を書くこと。会話はなし。 要点は情景(シーン)や動き(アクション)のあざやかな描写を、動詞・名詞・代名詞・助詞だけを用いて行うことだ。 時間表現の副…

『文体の舵をとれ』練習問題(4)「重ねて重ねて重ねまくる」

問一:語句の反復使用 一段落(三〇〇文字)の語りを執筆し、そのうちで名詞や動詞または形容詞を、少なくとも三回繰り返すこと(ただし目立つ語に限定し、助詞などの目立たない語は不可)。(これは講座中の執筆に適した練習問題だ。声に出して読む前に、繰…

『文体の舵をとれ』練習問題(3)「長短どちらも」

問一:一段落(二〇〇〜三〇〇文字)の語りを、十五字前後の文を並べて執筆すること。不完全な断片文(間投詞や体言止め)は使用不可。各文には主語(主部)と述語(述部)が必須。 今日も妹が泣きながら帰ってきた。今日も柳くんが泣かせたのだ。だからまた…

『文体の舵をとれ』練習問題(2)「ジョゼ・サラマーゴのつもりで」

一段落〜一ページ(三〇〇〜七〇〇文字)で、句読点のない語りを執筆すること(段落などほかの区切りも使用禁止)。 長かったとにかく長かった昇降機の揺れが止まれば約束の時間から二十一分といったところでドアが開くのももどかしくきっとオオヤギは怒って…